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相続不動産の売却時に税金を軽減できる4つの特例を解説!【税額控除のシミュレーション付き】

「相続した家を売るときに使える特例はなに?」
「特例を使うとどのくらい税金が軽減されるの?」

相続した不動産を売るときに節税できる特例を使いたいけど、どの特例を使えば良いのか迷いますよね。

相続した不動産を売却するときに使える特例は4つです。

これらの特例を使うと、本来支払わなければならない税金が軽減されます。そして特例を使う場合と使わない場合では、数百万円もの差がでることもあり使わないと損です。

この記事では、相続した不動産を売却するときに使える特例を詳しく解説します。
特例は誰もが使えるものではありません。特例が使える条件があり、手続きも必要なので理解しておく必要があります。

あなたに合った特例をうまく利用して、節税しましょう。まずは、特例の条件があなたに当てはまるかを確認することから始めてみてください。

1. 相続した不動産を売却する際に使える特例一覧

冒頭でもお伝えしたとおり、相続した不動産を売却する際に使える特例は、以下になります。

相続した不動産を売却する際に使える特例

①空き家の譲渡所得の特例

相続した家が昭和56年5月31日以前に建てられた家屋である場合、譲渡所得から最高で3,000万円まで控除される

②相続税の取得費加算の特例

相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、相続税の一部を取得費として計算できる

③3,000万円の特別控除の特例

所有期間に関係なく譲渡所得から最高で3,000万円まで控除される

④軽減税率の特例

10年以上所有していた家を売却した場合、税率が低くなる

特例は4つあり、それぞれ利用できる条件が違います。そのため、ご自身が使える条件に合致するかどうか判断が必要になります。

次章以降で、

  • 特例の特徴
  • 利用できる条件
  • 手続き方法
  • どのくらい軽減できるかのシミュレーション

についてそれぞれ詳しく紹介していきます。

特例によっては、数百万円も税金を軽減することができるので、活用できる「特例」については積極的に利用していきましょう。

2. 【相続不動産売却の特例①】空き家の譲渡所得の特例

空き家の譲渡所得の特例は、相続した不動産を売却するときに使える特例の中でも節税効果の高い特例です。

しかし、条件が厳しくなっているので1つずつ確認していきましょう。

2-1.空き家の譲渡所得の特例とは

空き家の譲渡所得の特例は、条件を満たした場合に譲渡所得から最高で3,000万円まで控除される特例です。

不動産を売却した際にかかる譲渡所得が最高で3,000万円控除されるので、以下のような計算になります。

譲渡所得=譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)ー 3,000万円

3,000万円まで控除されるので、譲渡所得が0となることもあります。譲渡所得が0なので、もちろん譲渡所得に対する税金もかかりません。

とってもお得でぜひ使ってほしい特例なのですが、条件が厳しくなっています。次項で条件を紹介するので、当てはまるか確認してみてください。当てはまる場合は、ぜひ空き家の譲渡所得の特例を使って節税しましょう。

2-2. 空き家の譲渡所得の特例が使える条件

空き家の譲渡所得の特例は、

  • 被相続人が亡くなる前に相続した家に住んでいた場合
  • 老人ホーム等に入居していた場合

といった2つのケースで使うことができます。このケースごとに特例が使えるかどうかの条件が異なります。

以前は、被相続人が亡くなる前に住んでいた家にしかこの特例は使えませんでした。しかし、平成31年度の法改正によって老人ホームに入居していた場合にも特例が使えるようになったので、対象となる方も増えました。

まずは、ご自身が条件に当てはまるのか確認してみましょう。

2-2-1. 住んでいた家の場合

相続開始直前まで被相続人が住んでいた家を売却する場合の条件は以下の通りです。

相続した家屋の条件

  • 相続開始の直前まで被相続人が住んでいた家屋であること
  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家屋であること
  • マンション以外の家屋であること
  • 相続開始の直前に被相続人以外の人が住んでいない(ひとり暮らしである)こと
  • 相続してから売却するまで空き家であること
  • 耐震基準に適合することが証明された家屋であること

譲渡するときの条件

  • 譲渡価額が1億円以下であること
  • 親子や夫婦など親族以外の第三者に譲渡すること

適用期間の条件

  • 相続が発生した日〜3年を経過する日の年の12月31日まで

ただし、家屋の条件にある昭和56年5月31日以前に建てられた家屋で耐震基準に適合することは、ほとんどありません。

そのため、

  • 売却する際に耐震リフォームを行う
  • 家屋を取壊して敷地だけを売却する

の2つの方法のどちらかをしなければいけないケースがほとんどです。

特例を使う際には、どちらがお得かを見極めて利用しなければいけません。

耐震リフォーム費用と家屋を取壊す解体費用の相場を40坪の木造住宅で比較してみると以下のようになります。

耐震リフォーム費用の平均

200〜320万円

解体費用の平均

124〜260万円

工事内容や地域によっても差があるので一概には言えませんが、耐震リフォームを行うよりも家屋を取壊

す費用の方が安くすみます。

家屋を取壊すか迷ったときにはこちらの「土地売却の解体費用はいくら?相場と更地にした場合との違いを解説」の記事も参考にしてみてください。取壊したときのメリット・デメリットや解体費用も詳しく紹介しているので、ご自身の場合どちらが良いのか判断できるでしょう。

2-2-2. 老人ホーム等に入居していた場合

平成31年度の法改正によって、被相続人が亡くなる前に老人ホームに入居していた場合にも特例の対象になりました。老人ホーム等に入居していた場合の条件は、以下の通りです。

相続した家屋の条件

  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家屋であること
  • マンション以外の家屋であること
  • 相続してから売却するまで空き家であること
  • 耐震基準に適合することが証明された家屋であること
  • 被相続人が老人ホーム等に入居した時点から相続開始の直前まで、事業や賃貸などに使用されていなかったこと
  • 被相続人が老人ホーム等に入居した時点から相続開始の直前まで、家屋が物品の保管等に使用されていたこと

譲渡するときの条件

  • 譲渡価額が1億円以下であること
  • 親子や夫婦など親族以外の第三者に譲渡すること
  • 平成31年(2019年)4月1日以降の譲渡であること

適用期間の条件

  • 相続が発生した日〜3年を経過する日の年の12月31日まで

被相続人の条件

  • 老人ホーム等に入居した時点で要介護認定等を受け、相続開始の直前まで老人ホーム等に入居していたこと

被相続人が住んでいた家の場合とほとんど条件は同じです。しかし、法改正が行われた平成31年(2019年)4月1日以降の譲渡の場合にしか適用されないので注意してください。

またここで言う老人ホーム等とは、以下の施設が対象です。

  • 特別養護老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • サービス付き高齢者向け住宅

これらの条件に当てはまる場合にも、空き家の譲渡所得の特例は使うことができます。次の手続きの方法を確認しスムーズに手続きを行えるようにしましょう。

2-3. 空き家の譲渡所得の特例の手続き方法

空き家の譲渡所得の特例を使う場合、2つのステップで手続きを行います。

ステップ1. 市区町村の役場で空き家の「被相続人居住用家屋等確認書」を発行してもらう
ステップ2. 確認書を確定申告に添付して税務署に提出する

それぞれの必要書類や手続きの仕方をみていきましょう。

ステップ1. 市区町村の役場で空き家の「被相続人居住用家屋等確認書」を発行してもらう

まずは、市区町村の役場で「被相続人居住用家屋等確認書」を発行してもらいます。

「被相続人居住用家屋等確認書」を発行する際に必要な書類は、以下です。

家屋・家屋及び敷地を売却する場合

  1. 被相続人の除票住民票の写し
  2. 相続人の住民票の写し
  3. 家屋・敷地の売買契約書の写し
  4. 以下の書類のいずれか
    ・電気・ガス・水道の使用中止日が確認できる書類
    ・宅地建物取引業者が現況空き家であることを表示して広告していることを証明する書面の写し

家屋を取り壊し敷地のみを売却する場合

  1. 被相続人の除票住民票の写し
  2. 相続人の住民票の写し
  3. 被相続人の居住用家屋の取壊し、除去後の敷地の売買契約書の写し
  4. 以下の書類のいずれか
    ・電気・ガス・水道の使用中止日が確認できる書類
    ・宅地建物取引業者が現況空き家かつ取壊しの予定があることを表示して広告していることを証明する書面の写し
  5. 更地の写真

それぞれの状況に合わせた書類と「被相続人居住用家屋等確認申請書」を市区町村の役場に提出します。

被相続人が老人ホームに入居していた場合には、以下の書類も追加で必要です。

  1. 被相続人の介護保険証の写しまたは障害福祉サービス受給者証
  2. 老人ホーム等の名称・所在地・施設の種類が確認できる書類
  3. 以下の書類のいずれか

・電気・ガス・水道の使用中止日が確認できる書類
・老人ホーム等が保有する外出・外泊等の記録

「被相続人居住用家屋等確認申請書」は、市区町村役場のホームページからダウンロード可能です。確認書は交付まで1〜2週間ほどかかり、不備などがある場合はさらに時間がかかることもあるので不備のないように申請しましょう。

また、市区町村によって違いがあるので、市区町村の役場で必ず確認してください。

ステップ2. 確認書を確定申告に添付して税務署に提出する

確認書が発行されたら確定申告を行います。確定申告は、譲渡を行った翌年の2月16日から3月15日の期間で行わなければなりません。

期限を過ぎると特例が認められなくなるので注意してください。そして確定申告をする際には、以下の書類が必要です。

家屋・家屋及び敷地を売却する場合

  1. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  2. 登記事項証明書
  3. 被相続人居住用家屋等確認書
  4. 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し

家屋を取り壊し敷地のみを売却する場合

  1. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  2. 登記事項証明書
  3. 売買契約書の写し
  4. 被相続人居住用家屋等確認書

これらの書類と合わせて確定申告書をお住まいの所轄の税務署に提出します。

2-4. こんなときどうする?

特例を使いたいけど、「兄弟で相続した場合はどうなるの?」「事業兼住宅として使用していた場合は?」などの疑問がでてきますよね。

ここでは、そのような場合に特例を使えるのか詳しくご説明していきます。

2-4-1. 兄弟で相続した家の場合

まず、兄弟で家を相続した場合についてです。兄弟で相続した家を売却するときに、空き家の譲渡所得の特例を使う場合のポイントは2つあります。

ポイント1. 相続人1人につき3,000万円控除される
ポイント2. 特例を使えるのは家の所有者だけ

兄弟で家を2分の1、3分の1にして相続した場合、兄弟それぞれに特例を使うことができます

家を共有ではなく土地だけを共有した場合は、家の所有者以外の人は特例を受けることができません。

例えば、兄弟2人の場合には相続した不動産によって特例が使えるかが以下のように変わります。

このように家を所有している人でないと特例が受けられないので注意してください。

相続した不動産を売却する予定であれば、家と土地を分けずに兄弟でそれぞれ相続した方が節税効果が高くなるので、特例のことも視野にいれて相続の話し合いを行うと良いでしょう。

2-4-2. 事業用と併用した居住用の家の場合

事業用と併用した居住用の家の場合は、自宅として使っていた部分のみ特例を使うことができます。事業部分と居住部分の利用面積の比率で計算しましょう。

居住部分が全体の90%以上の場合には、全体を居住用として使っていたこととなり特例を使うことができます。

2-5. 特例を使った場合の税金シミュレーション

実際に特例を使った場合の、シミュレーションをしていきます。どのくらい節税されるのか参考にしてみてください。

例えば、家を7,000万円で売却した場合の譲渡所得をシミュレーションしてみましょう。

譲渡価額:7,000万円
取得費(購入価格):2,000万円
譲渡費用:230万円
所有期間:5年以上

譲渡所得の計算式に当てはめ、上記の場合の譲渡所得を出してみると以下の通りになります。

譲渡所得=譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)ー 3,000万円
    =7,000万円ー(2000万円+230万円)ー 3,000万円
    =1,770万円

そして、税率は20.315%なので譲渡所得税は以下です。

1,770万円 × 20.315%=約359.6万円

特例を使うと約359.6万円の譲渡所得税を支払う必要があります。ちなみに特例を使わない場合、税金は約969万円となります。約600万円もの差が出るのは大きいですね。

3. 【相続不動産売却の特例②】相続税の取得費加算の特例

相続税の取得費加算の特例は、相続開始から3年10ヶ月までの間に相続した不動産を売却した場合に相続税額の一定金額を譲渡資産の取得費に加算する制度です。

空き家の譲渡所得の特例よりも条件は厳しくありません。空き家の譲渡所得の特例が使えない場合は、取得費加算の特例を検討してみましょう。

ここでは、相続税の取得費加算の特例が使える条件や手続きの方法を詳しく説明していきます。まずは、ご自身の条件に合っているか確認してみてください。

3-1. 相続税の取得費加算の特例とは

相続税の取得費加算の特例は、相続税の一部を取得費として計算してもよいという特例です。

不動産を売却した際には、譲渡所得に対して相続税がかかります。つまり取得費が多くなれば、相続税として支払う必要がある税金が少なくなるのです。

取得費の加算額と譲渡所得の計算式は以下になります。

取得費の加算額=相続税額 × 売却した不動産の価額 ÷(相続税の課税価格+債務控除額)
譲渡所得=譲渡価額ー(取得費+取得費の加算額+譲渡費用)

取得費加算の特例は、相続後3年10ヶ月以内に売却することが条件となっています。相続した不動産を売却すると決めている人は、早めに売却して節税しましょう。

3-2. 特例が使える条件

相続税の取得費加算の特例が使える条件は、以下の3つです。

  • 相続を受けた者が売却すること
  • 不動産を相続した者が相続税を支払うこと
  • 相続開始から3年10ヶ月以内に売却すること

これら3つの条件を全て満たしていなければ、特例を使うことはできません。空き家の譲渡所得の特例と比べて条件も多くないので、利用しやすい特例です。条件に当てはまる場合は、ぜひ利用しましょう。

続いて、手続きの方法についてみていきます。

3-3. 手続きの方法

相続税の取得費加算の特例を使うときも確定申告をしなければなりません。確定申告書を提出する際には、以下の書類が必要となります。

①相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
②譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】)

どちらも国税庁の公式サイトからダウンロードできるので、利用してください。2つの書類と確定申告書を合わせてお住まいの所轄の税務署に提出します。

3-4. 特例を使った場合の税金シミュレーション

では、実際に相続税の取得費加算の特例を使うのどのくらい税金が少なくなるのかみていきましょう。以下の条件で売却された場合、支払う税金はいくらになるのかシミュレーションしていきます。

相続財産:不動産5,000万円、現金2,000万円
相続税額:1,200万円
債務控除額なし
譲渡価格:7,000万円
取得費(購入価格):4,000万円
譲渡費用:230万円
所有期間:5年以上

条件を当てはめると取得費に加算できる相続税額は以下になります。

取得費の加算額=相続税額 × 売却した不動産の価額 ÷(相続税の課税価格+債務控除額)
       =1,200万円×5,000万円÷7,000万円
       =約857万円

そして約857万円を加算して譲渡所得を計算していきます。

譲渡所得の計算式は、以下になり実際に金額を当てはめてみます。

譲渡所得=譲渡価額ー(取得費+取得費の加算額+譲渡費用)
    =7,000万円ー(4,000万円+857万円+230万円)
    =1,913万円

そして、税率20.315%で税金を計算します。

1,913万円 × 20.315%=約442.9万円

つまりこの条件の場合、取得費加算の特例を使って約442.9万円の税金を納める必要があります。しかし特例を使わなかった場合は約562.7万円となり、約120万円軽減されます。

特例が使える条件も3つだけなので、上手く利用して節税しましょう。

4. 【相続不動産売却の特例③】3,000万円の特別控除の特例

3,000万円の特別控除の特例は、被相続人と同居していた場合に使える特例の1つです。同居していた家を相続したけど売却したいというときには、3,000万円の特別控除の特例が使えないか確認してください。

それでは、3,000万円の特別控除の特例について条件や手続き方法をみていきましょう。

4-1. 3,000万円の特別控除の特例とは

3,000万円の特別控除の特例は、居住用の家屋を売却した場合、所有期間に関わらず最高で3,000万円の控除を受けることができる特例です。親と同居していた家を売るという場合にもこの3,000万円の特別控除の特例が使えます。

居住用の財産を譲渡した場合に適用されるので、事業用や別荘として使用していた家屋は対象外です。

また、所有期間の決まりがないという大きな特徴があります。ですから、1年住んでいた場合にも条件が当てはまれば特例を使って3,000万円まで控除を受けることも可能です。

3,000万円の特別控除の特例を使うと、以下の計算式で譲渡所得を計算します。

譲渡所得=譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)ー 3,000万円

譲渡所得が3,000万円も控除されると、支払う税金も1,000万円近くかわってきます。同居していた家を売りたいという場合は、3,000万円の特別控除の特例を利用しましょう。

4-2. 特例が使える条件

3,000万円の特別控除の特例が使えるのは、以下の条件に当てはまる場合です。

  • 住んでいる家屋もしくは住まなくなってから3年以内の家屋であること
  • 前年、前々年にこの特例またはマイホームの買換え特例などの適用を受けていないこと
  • 親子や夫婦など親族以外の第三者に譲渡すること

3,000万円の特別控除の特例は、3年に一度しか使うことができない特例です。この特例だけでなく、マイホームの買換え特例やマイホームの交換の特例も含まれるので注意してください。

また、以下の場合には適用されないの覚えておきましょう。

  • 特例を受けるために入居したと認められる場合
  • 仮住まいとして使っていたり、一時的な目的で入居したと認められる場合
  • 別荘など趣味や娯楽、保養のために所有している場合

マイホームを売却した際に使える特例なので、居住用として使われていたかどうかがチェックポイントとなります。居住用として使っていた家であれば、ほとんどの場合この特例が適用されるのでぜひ利用しましょう。

4-3. 手続きの方法

3,000万円の特別控除の特例を使うためには、確定申告を行います。確定申告は、不動産を売却した翌年2月16日から3月15日の間に行わなければなりません。

確定申告をする際の必要書類は、以下の2つです。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
  • 住民票の写し

譲渡所得の内訳書は、国税庁の公式サイトからダウンロードできるので利用してください。2つの必要書類と確定申告書をお住まいの所轄の税務署に提出します。

4-4. 特例を使った場合の税金シミュレーション

それでは、3,000万円の特別控除の特例を使ったときのシミュレーションをしてみましょう。今回は、こちらの条件でシミュレーションします。

譲渡価額:5,000万円
取得費(購入価格):1,000万円
譲渡費用:230万円
所有期間:5年以下

まずは、譲渡所得を以下の計算式で計算します。

譲渡所得=譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)ー 3,000万円
    =5,000万円ー(1,000万円+230万円)ー 3,000万円
    =770万円

そして、所有期間が5年以下なので税率39.63%で税金を計算します。

770万円 × 39.63%=約305.2万円

この場合の税金は、約305.2万円となります。特例を使わない場合は、約1,494万円の税金を支払わなければなりません。

特例を使う場合と使わない場合では、約1,190万円もの差があります。親と同居していた家を売る場合には、3,000万円の特別控除の特例を使わない手はありませんね。

5. 【相続不動産売却の特例④】軽減税率の特例

所有期間が10年を超えている家屋を売却する場合には、軽減税率の特例が使えます。この特例も亡くなった方と同居していた家を売るときに使え、3,000万円の特別控除の特例と併用が可能です。

10年以上所有していた家屋を売る場合は、3,000万円の特別控除の特例と合わせて軽減税率の特例も使いましょう。

5-1.軽減税率の特例とは

軽減税率の特例は10年超所有軽減税率の特例とも呼ばれ、10年以上所有していた家を売るときに使えます。

特例を使うと、長期譲渡所得よりも低い税率で税金を計算することができます。条件に当てはまる場合、家屋を売却した際にかかる税率が以下のように低くなります。

通常(5年超)

譲渡所得が6,000万円以下

譲渡所得が6,000万円以上

6,000万円以下の部分

6,000万円超の部分

所得税

15.315%

10.21%

10.21%

15.315%

住民税

5%

4%

4%

5%

合計

20.315%

14.21%

14.21%

20.315%

譲渡所得が6,000万円以下であれば、税率が6.105%軽減されます。3,000万円の特別控除の特例とも併用できるので上手く利用すると良いですね。

それでは、特例が使える条件をみていきましょう。

5-2. 特例が使える条件

軽減税率の特例が使える条件は以下です。

  • 住んでいる家屋もしくは住まなくなってから3年以内の家屋であること
  • 親子や夫婦など親族以外の第三者に譲渡すること
  • 譲渡した年の1月1日において、家屋と土地の所有期間が10年を超えていること
  • 前年、前々年にこの特例を受けていないこと

3,000万円の特別控除の特例の条件と同じ条件もあります。

1番のポイントは、家屋の所有期間が10年を超えているかどうかです。10年以上住んでいた家屋を売る場合には、ぜひこの特例を使いましょう。

5-3. 手続きの方法

軽減税率の特例を使う場合にも確定申告が必要です。他の特例と同じで、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に行いましょう。

確定申告の際に必要な書類は、以下の5つです。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
  • 売却した不動産の登記事項証明書

譲渡所得の内訳書は国税庁の公式サイトでダウンロードでき、登記事項証明書は法務局で申請し取得することができます。確定申告書を作成し、必要書類と一緒に管轄の税務署に提出しましょう。

5-4. 特例を使った場合の税金シミュレーション

実際に特例を使うとどのくらい税金がかかるのかみていきましょう。ここでは、以下の条件でシミュレーションを行います。

譲渡価額:7,000万円
取得費(購入価格):3,000万円
譲渡費用:230万円
所有期間:25年以下

始めに譲渡所得を計算します。

譲渡所得=譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)
    =7,000万円ー(3,000万円+230万円)
    =3,770万円

この場合、譲渡所得が6,000万円以下となるので、税率は14.21%で計算します。

3,770万円 × 14.21%=約535.7万円

所得税・住民税を合わせて約535.7万円支払うことになります。特例を使わない場合、税率が20.315%ととなり税額は約765.9万円です。

軽減税率の特例を使う場合と使わない場合で230万円もの差になります。10年以上所有した自宅を売却するときは、3,000万円の特別控除の特例と併せて軽減税率の特例を使いましょう。

6. 相続した不動産を売却したときに使える特例の2つの注意点

ここまで、4つの特例について詳しく解説していきました。「特例が使えそう!」と思った人も手続きを行う前に以下の2つの注意点を確認しておきましょう。

  1. 適用期間があるか確認する
  2. 併用できる特例とできない特例がある

それぞれ詳しく説明していきます。

6-1. 適用期間・譲渡期限があるか確認する

今回紹介した特例の中でも、空き家の譲渡所得の特例は使える期間が決められています。

また、売却するまでの期限も限られている特例が多いです。適用期間や譲渡期限を過ぎて売却した場合は、特例が使えないので必ず確認しておきましょう。

今回紹介した特例の適用期間と譲渡期限は、次の通りです。

特例の種類

適用期間

譲渡期限

空き家の譲渡所得の特例

平成28年4月1日〜令和5年12月31日

相続発生から3年を経過する年の12月31日まで

相続税の取得費加算の特例

なし

相続発生から3年10ヶ月まで

3,000万円の特別控除の特例

なし

家を取壊した場合:1年以内に売買契約、住まなくなって3年目の年末までに引渡し

マイホームを売ったときの
軽減税率の特例

なし

住まなくなって3年目の年末まで

譲渡期限はどの特例にも設定されているので、期限内に対象の家屋を売却しなければなりません。ほとんどの特例の譲渡期限は、3年程度なので売る予定がある場合は早めに進めていきましょう。

6-2. 併用できる特例とできない特例がある

不動産の売却をする際に使える特例の中には、併用できるものとできないものがあります。

節税効果の高い特例をいくつか使いたいと思う人も多いのではないでしょうか。しかし特例は、条件が合えばいくつも使えるわけではありません。

併用できるものとできないものがあるので、特例の利用を考えている場合には確認しておきましょう。今回紹介した特例で併用できる特例とできない特例は、以下の通りです。

特例の種類

併用可能な特例

併用できない特例・控除

空き家の譲渡所得の特例

マイホームを売ったときの特例又は特定のマイホームを買換えたときの特例のいずれか
住宅ローン控除

相続税の取得費加算の特例

相続税の取得費加算の特例

マイホームを売ったときの特例又は特定のマイホームを買換えたときの特例のいずれか

空き家の譲渡所得の特例

3,000万円の特別控除の特例

軽減税率の特例

マイホームを買換えたときの特例
住宅ローン控除

マイホームを売ったときの
軽減税率の特例

3,000万円の特別控除の特例

マイホームを買換えたときの特例
住宅ローン控除

空き家の譲渡所得の特例と相続税の取得費加算の特例は、どちらかしか使えません。条件が当てはまる場合は、空き家の譲渡所得の特例を使った方が節税効果が高いことが多いです。

そのため、まずは空き家の譲渡所得の特例を使えるのか検討してみましょう。

3,000万円の特別控除の特例、マイホームを売ったときの軽減税率の特例は、住宅ローン控除と併用できません。しかし併用できないのは、入居した年の前後2年が対象となります。

特例を使うか住宅ローン控除を使うかは、売却した利益によって決めると良いでしょう。利益が少ない場合、住宅ローン控除を使った方が良い場合もあります。

それぞれどのくらい節税できるのか比較して、どの特例を使うのか決めましょう。

7. 不動産を相続した場合に知っておくべき税金の知識一覧

最後に相続した不動産を売却するときにかかる税金について解説します。相続した不動産を売却するときにかかる税金は、以下の5つです。

税金の種類

概要

登録免許税

登記の内容を変更するときに国に対して支払う税金

印紙税

不動産の売買契約書に貼り付ける印紙にかかる税金

譲渡所得税

不動産を売却したときに得る利益「譲渡所得」に対してかかる税金

住民税

不動産を売却したときに得る利益「譲渡所得」に対してかかる税金

復興特別所得税

2037年まで所得税に対してかかる税金(東日本大震災の復興に必要な財源確保のため)

特例を使うと、譲渡所得税・住民税・復興特別所得税の3つが軽減されます。

それぞれの税額や税率など詳しくは、「【図解でよくわかる】相続した不動産の売却にかかる税金と節税になる特例・控除を解説」をご覧ください。

まとめ

相続した不動産を売却する際に使える特例4つを詳しく解説しました。

それぞれの特例には条件があり、特例を使うと何百万円もの節税が期待できます。

条件に当てはまる特例があれば利用しない手はありません。

また、特例を使う場合には売却した翌年2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。

必要な書類も特例ごとに違うのでしっかり確認して正しく納税しましょう。

相続した不動産を売却する際には、「相続した不動産を売却する際の正しい手順と注意点をわかりやすく解説」の記事も参考にしてください。

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