「築一年の物件を売らなきゃいけなくなったけど、購入時と同じくらいの価格で売れるのかな?」
築一年の物件でも、親の介護や離婚、思わぬトラブル等でやむを得ず売却を検討しなければならない事があります。
そんな時に気になるのが、「幾らで売却できるのか?」という事ですよね。
結論から言えば、築一年の物件は購入金額と変わらない高値での売却できる可能性があります。
以下の2点が主な理由として挙げられます。
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とはいえ、築一年の物件が必ず高額で売却できるかと言えば、そういうわけではありません。築一年の物件でも場合によっては低い価格で売却されてしまう場合もあります。
築一年の物件でも高値で売却したい場合は正しく準備をする事が必要です。
そこでこの記事では、
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この辺りについて詳しく解説していきます。また、物件を売りに出す流れや必要な経費も後半にまとめていますので、参考になれば幸いです。
目次
1. 築一年の物件は購入時とさほど変わらない金額で売却ができる!
冒頭でも説明した通り、築一年の物件は、築年数が経った物件に比べて高額で売却できる可能性が高くなります。
そのように言える根拠は、主に以下の2つです。
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それぞれ詳しく見てみましょう。
1-1. 築一年の物件は高額で売却しやすいとのデータがある
築年数が浅く状態が良い物件は物件としての価値が十分に高いとみなされるため、高額で売却される傾向にあります。
以下の表は、国土交通省の「中古住宅流通、リフォーム 市場の現状(国土交通省)」から、築一年の物件の価格下落率を参考にしたものです。
この表によると、築一年のマンションの売却価格は購入価格の95%以上が維持されていることが分かります。
また、環境条件の違いと地価の違いをもとに価値の計測を行う「ヘドニック法」による分析の場合でも90%前後の価格で売却できるという結果が出ています。
データを見る限りでも、基本的に築一年の物件は高額で売却できることが分かります。
1-2. 「新築」扱いで売りに出せると高額売却できる
築一年の物件は高値で売却できるとのデータがあると解説しましたが、もし売却予定の物件が築一年未満で、一度も住まわれていない場合は「新築」として売りに出すことができます。
新築物件として売りに出せる場合は、高額での売却はより確実なものとなります。なぜなら新築物件は、買い手にとっても売り手にとっても大きなメリットとなるからです。
具体的に、「新築」で売りに出した場合のメリットは以下の通りです。
買い手側のメリット |
売り手側のメリット |
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一つずつ具体的に解説していきます。
1-2-1. 買い手のメリット①住宅設備が老朽化していない
完成したばかりで誰にも使われていない物件は、当然設備も最新で老朽化もしていません。痛みが少ない場合メンテナンスにもお金がかからず、長い目で見ても修繕のコストは少なく済みます。
1-2-2. 買い手のメリット②瑕疵担保責任を問える期間が長い
瑕疵担保責任とは、物件を購入した後に施工不良や雨漏りなど、売り手や不動産会社も把握していなかった問題が勃発した際に売り手側に問える責任の事を指します。
このような問題が生じた場合、買い手は瑕疵担保責任を問える期間内であれば、売り手側や不動産会社に修繕を依頼したり、場合によっては賠償責任に問う事も可能です。
「新築」で売却した際には、この瑕疵担保責任を問える期間が10年間と長くなります。それだけ買い手は安心して購入できるのです。
一方、中古で物件を購入した際の瑕疵担保責任を問える期間は最低2年となります。
瑕疵担保責任を問える期間 |
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新築物件 |
中古物件 |
10年 |
最低2年 |
1-2-3. 買い手のメリット②固定資産税を節税できる
物件を購入した場合、買い手は固定資産税を支払う必要があります。
固定資産税は以下の通りに算出されます。
固定資産税評価額 × 税率1.4% = 固定資産税 |
固定資産税は建物と土地を別々に算出します。
戸建て新築物件の場合は「新築住宅の税額軽減の特例」が設けられている為、建物の部分の税額が1/2に軽減されます。
固定資産税減税の条件 |
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例えば、3,000万円の戸建て新築を購入した場合の家屋にかかる固定資産税は以下が目安となります。
3,000万円 × 1.4% ÷ 2 = 21万円
つまり、新築物件と中古物件では以下のように差が出るのです。
3,000万円家屋の固定資産税の例 |
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新築物件 |
中古物件 |
21万円 |
42万円 |
以上の3つ点から、「新築物件」は買い手にとって圧倒的にメリットが大きいのです。
買い手にとってメリットが大きい新築物件は人気も高くなるため、高額での売却が見込めます。
条件を満たしている場合には、必ず新築物件としての売却を目指しましょう。
2. 築一年の家をできるだけ購入金額に近い高値で売却する6つのポイント
新築扱いで売却ができる場合は、築一年になる前の早期に売りに出せば高値で売却できる可能性が非常に大きくなります。しかし、既に築一年が経過している、もしくは既に住んでいる場合は、中古物件として売却になるため売り方に工夫が必要です。
そこで、築一年を経過した中古物件について、できるだけ購入金額に近い価格で売却するためのポイントをご紹介します。
2-1. なるべく早期に売却する
築一年などの築浅物件を売却する場合は特に早期売却を目指す必要があります。なぜなら、時間がかかればかかるほど、「新築」または「築一年」の物件としての価値が薄れていくからです。
通常、物件を売却する場合は売却のタイミングが非常に重要です。売却の際は、主に以下の要因を考慮しタイミングを見ながら進められます。
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ただし、築一年の物件に関してはその限りではありません。なぜなら、ここまで何度も解説しているように、築一年の物件は「新しいことが最大のメリット」だからです。
売りやすい季節を待っていたら売り逃してしまい、もし「新築」で売却できたはずの物件でも中古で売る事になりかねません。「新築」の条件から外れる「築一年」直前の場合などは特にタイムリミットが近いと考え、スピーディに売却活動を行いましょう。
売却のタイミングに関して、詳しくは「家を売るベストタイミングと売却してはいけない時期をズバリ解説」を参考にしてみてください。
2-2. 内覧準備をしっかりと行う
内覧の準備をしっかり行うことは、売却価格にも良い影響をもたらします。
買い手が物件を購入する決め手となるのが、物件の内覧です。買い手は内覧によって自分の条件に合った物件かどうかを判断します。価格や立地、間取りなど様々な条件はあるものの、最終的に「これだ!」と決めるのは内覧を行ってからなのです。
その為、売り手は最善を尽くして物件のメンテナンスをする必要があります。
買い手側から見て築一年の物件は設備等が新しく、清潔なことが期待されています。万が一管理が行き届いていない部分があれば、売却価格が下がったり、最悪の場合売り逃しにも繋がります。
築一年の物件の内覧準備のためには、特に見た目の印象に気を付けましょう。
内覧準備のためにできる事 |
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とにかく、家に入った時の「第一印象」を良くするよう心がけます。
「パッと見て清潔」「明るくて印象がいい」「無臭」等の印象を与えられるよう工夫しましょう。必要であればプロのハウスキーパーにクリーニングを頼んだり、汚れた壁紙などは張り替える必要があるかもしれません。
2-3. 付帯設備を残す
エアコンや照明などの必需品は、撤去しない方が喜ばれる可能性があります。
内覧を行う前に、そんな付帯設備を残すべきかも慎重に決めましょう。
以下のリストは人気の高い付帯設備の例です。
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これら全てを残す必要はありませんが、物件の価値が高まると思うものであれば残すことも考えましょう。
2-4. 適正価格を打診する
折角の築一年の物件、できるだけ高値で売却したいですよね。しかし適正価格を打診できなかった場合は、損をしてしまう可能性があります。
価格が高すぎる場合 |
なかなか売れず、売却の機会を逃す |
価格が低すぎる場合 |
相場より安く売却し、損をする |
そのような失敗を防ぐために必要なのが、適正価格をしっかりリサーチする事。
販売価格を決めるのは売り手自身です。リサーチをせず価格を設定し、損をしてしまう事は絶対に避けましょう。
築年数が経ている中古物件を売却するよりも、築浅の物件の方が早期売却が重要になることは前述した通りです。これが「新築」「築一年」であればなおさらです。
物件の相場を調べるのは簡単な事ではありませんが、いくつかのサイトを利用してしっかりリサーチを行いましょう。
土地情報システムは国土交通省が運営している、不動産の取引価格や地価公示、都道府県地価調査の価格を閲覧できるWEBサイトです。取引の記事と物件種別(マンション、戸建て、土地と建物など)と地域を選択することで、過去の取引の詳細など確認できます。
レインズマーケットインフォメーションを利用して不動産の成約価格を確認するのもおすすめの方法です。「レインズマーケットインフォメーション」は、一般のユーザーが相場や直近1年間の不動産の成約価格などを調べることができるサイトです。
これらのサイトを利用し、自分の売りたい物件と同じ条件ではどのくらいの価格で売れているか、などをしっかり把握する必要があります。その上で、自分の売りたい額と相談しながら慎重に進めましょう。
物件の相場に関しては「不動産売却では相場を知ることが重要?令和2年の相場を解説」でも詳しく解説していますので、参考にしてみて下さい。
2-5. 複数査定してから不動産会社を決める
物件の売却には不動産会社の選びもとても重要です。不動産会社によって、売却できる価格に差が出る事も珍しくないからです。
不動産会社を選ぶ上で最も重要なのは、複数査定を行う事です。
不動産会社選びは簡単ではありません。どんな不動産会社も自分が担当をしたい為に、あの手この手でアプローチをかけてきます。
例えば、査定をお願いすると不動産会社によっては以下のような事が起こり得ます。
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場合によっては、売り手側の不利益になる提案をしてくる事も少なくありません。その不動産会社が適切か見極めるのは簡単ではないかもしれませんん。
重要なのは、どうしてこの価格を査定したのか、納得のいく説明をしてもらえるかどうかです。査定結果がそのまま販売価格になるわけではありません。不動産会社が誠意をもって対応してくれるかどうか、見極めるのが重要です。
膨大な不動産会社に一軒ずつ査定をしてもらうのは非効率です。
一括で査定ができるサービスがありますので、それらを利用し効率的に行動しましょう。
2-6. 築一年で売却に至った理由を伝える
売り手が築一年で売却するに至った理由は、買い手にとって最も欲しい情報の一つです。
自分にかかわることであれば、物件が売られる理由は買い手としては非常に気になる点です。特に、築一年という短い期間で売却される物件であればなおさらです。
この点に関して売り手側ができる事と言えば、築一年の物件を売却するに至った理由を買い手を安心させる事です。例え離婚や親の介護等、プライベートな内容であってもしっかりと伝え、納得してもらうよう心がけましょう。
また、万が一住宅設備や環境など、売り手側にもデメリットと成り得る問題で売却するとしても、やはり隠さず買い手に伝える必要があります。故意にそれらの事実を隠して売却してしまった場合、損害賠償も請求される可能性があるからです。
そういった伝えづらい事情がある場合は、あらかじめ不動産会社にその旨を伝え、支持を仰ぐと良いでしょう。
具体的に伝えづらい理由の場合に関しては、「家を売る理由ランキングTOP10と買主への売却理由の上手な伝え方」で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
3. 住宅ローンの完済をしないと売却ができない点に注意
築一年の物件でも、住宅ローンは完済しなければ売却できません。
金融機関でローンを組む際に担保として抵当権が設定され、ローンが完済されるまで抹消できないからです。
抵当権とは? |
住宅ローン等でお金を借りた場合、借りた人が返済できなくなった場合に土地や建物を担保とする権利のこと。 |
とはいえ、住宅ローンが残っている状態で物件を売りに出す事が出来ないというわけではありません。売却が成立したら、その代金でローンを完済し、抵当権を抹消すればいいのです。
注意すべき点は、物件が新築であったとしても、購入価格よりも高い価格で売れることは少ない、という点です。売買が成立した場合でも、全額手元に入ってくるわけではありません。手数料や登記費用等を支払う必要があります。おおよそ売却価格の3~4%は引かれると見込みましょう。
例えば新築物件を3,000万円で購入し、それが2,800万円で売却できた場合でも、実際に手元に残るお金は約2,700万円ほどになります。ローン完済のためには、300万円は自己資金として用意し支払う必要があるのです。
物件を売却する際には、出さなければならない自己資金の事も念頭に置きましょう。
住宅ローンが残っている状態での売却について、詳しくは
・住宅ローンが残っていても不動産は売却できる!売却方法や流れを解説
・住宅ローン(抵当権)のある不動産は売却できる?注意点を解説
の2記事を参考にしてみてください。
4.築一年の家を売却する流れ
ここからは改めて、築一年の物件を売却する手順を解説します。
4-1. ①査定依頼
まずは、不動産会社に査定依頼を出します。第4章でも書いた通り、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。具体的には以下の項目に注意して不動産会社を選びましょう。
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この中で3番目の「誠実で接しやすい」という項目は特に判断が難しいポイントですが、売却終了までのパートナー選びと思い、慎重に検討しましょう。
4-2. ②売り出し価格決定
不動産会社を決めたら、売り出し価格も決定していきます。不動産会社の担当者としっかり話し合って決めましょう。
一般的に、低い価格から後々値上げすることはまずありません。状況を見て値下げする可能性も考えながら、価格を設定しましょう。
4-3. ③媒介契約締結
売却価格を決めたら、いよいよ不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約にはいくつかの種類があります。契約によってメリットやデメリットがありますので、こちらも慎重に選ぶ必要があります。
媒介契約の種類 |
不動産会社と複数契約 |
自分で買い手見つけた場合 |
レインズ登録義務 |
一般媒介契約 |
〇 |
不動産会社の仲介なしでも取引可能 |
登録義務なし |
専任媒介契約 |
× |
不動産会社の仲介なしでも取引可能 |
契約から7日以内に登録 |
専属専任媒介契約 |
× |
不動産会社の仲介が必要 |
契約から5日以内に登録 |
媒介契約についてより詳しく知りたい場合は下記の記事も参考にしてください。
➡媒介契約とは?3種類の媒介契約の違いと選び方をわかりやすく解説
4-4. ④売却活動開始
いよいよ売却活動開始です。物件のメンテナンスをしっかり行い、いつでも内覧を受けられるようコンディションを整えます。
不動産会社がWebサイトに登録する為の写真を撮影したり、チラシを制作してポスティングをするなどの活動を行う事が一般的です。売却活動が始まったら、宣伝活動において売り手がやるべきことは基本的にはありません。
が、あまりに進捗が芳しくないようだったら、連絡を待たずに積極的に不動産会社とコンタクトを取りましょう。
4-5. ⑤内覧の対応
内覧の問合せが来た場合、不動産会社から連絡があります。なるべく早く内覧を行うため、できるだけ客の希望通りの日時で調整します。改めて物件をメンテナンスし、あとは内覧を行うだけです。
内覧での対応いかんによって、買い手がつくかどうかは決まります。万全の準備を整えましょう。また、断られてもめげる事無く、物件をより魅力的に見せる努力もしていきましょう。
4-6. ⑥契約・引き渡し
内覧を経ていよいよ買い手が決まったら、後は契約と引き渡しです。ローンを完済する必要がある場合、銀行に赴く必要があります。とはいえ、必要な手続きはすべて不動産会社が指示を出してくれますので、安心してください。
以上が物件売却の大まかな流れになります。より詳細な情報を知りたい場合は「家を売る手順を図解でわかりやすく解説!初めての売却でも損しない方法」をご覧ください。
5. 売却する時にかかる税金・費用一覧
最後に、物件を売却する際に必要となる費用をまとめました。これらの費用を考慮せずに売却してしまうと、「思ったよりも低い価格になってしまった」と言う事にもなりかねません。事前に必要な費用を把握して売却活動を進めていきましょう。
5-1. 仲介手数料
仲介手数料は、売却契約が成立した際に不動産会社に成功報酬として支払うものです。仲介手数料は以下の計算式で産出されます。
仲介手数料の上限は「売買価格の3%+6万円+消費税」(売却価格が400万円を超える場合) |
例えば、4,000万円で物件を売却できた場合は以下の計算式となります。
4,000万円×0.03+6万円+消費税10%=136万6,000円 |
売却価格を決める前に、仲介手数料も計算しておきましょう。
媒介手数料の計算方法については「媒介手数料とは|不動産用語の意味といくらかかるか計算法を解説」をご覧ください。
5-2. その他の費用一覧
その他に負担する必要がある主な費用は下記の通りです。
項目 |
費用 |
印紙税 |
1000円∼6万円 |
登記費用 |
1万∼5万円 |
住宅ローン返済手数料 |
無料~3万円 |
譲渡所得税 |
物件所有期間が5年未満 = 売却益 × 30.63% |
住民税 |
物件所有期間が5年未満 =9% |
引っ越し |
10万~30万円 |
複雑な内容で、ご自身で計算するのは少し骨が折れるかもしれません。
具体的な計算方法等を解説した記事としては、
・不動産売却のシミュレーション方法を解説|手元にいくら残るかわかる
・不動産売却には税金がかかる?税金について解説
を参考にしてみて下さい。
6. まとめ
以上、築一年の物件を売却する時の方法や注意点を解説してきました。最後にもう一度、購入時に近い価格で売るためのポイントと注意点を振り返ってみましょう。
- なるべく早期に売却する
- 内覧準備をしっかりと行う
- 適正価格を打診する
- 複数査定してから不動産会社を決める
- 築一年で売却に至った理由を伝える
築一年の物件を売却するには、とにかくスピーディな行動が必要となります。売却を決断するのは簡単な事ではありませんが、先送りにせず向き合う事で最良の結果が得られるでしょう。