不動産を売却する際は、購入時よりも価格が下がっているのが一般的です。その理由は、築年数の経過とともに資産価値が減少するためです。
築年数の経過による資産価値の減少を不動産価格に反映する際は耐用年数という基準を用います。耐用年数とはどのような基準なのでしょうか?
この記事では、不動産売却における耐用年数とは何なのかを分かりやすく解説します。
目次
不動産売却における3つの耐用年数
不動産は築年数の経過とともに劣化が生じ、資産価値が年々減少します。資産価値がどのくらいのペースで減少するかは、所有している不動産の耐用年数によって異なります。
例えば、2,000万円の価値がある不動産を所有していて耐用年数が20年の場合は、毎年100万円ずつ資産価値が減少し、20年後には資産価値が0円です。
資産価値が0円でも居住できないわけではありません。あくまでも価値が0円になっただけで居住を続けることは可能です。では、耐用年数はどのように決まるのでしょうか?耐用年数の決め方は、全部で以下の3つです。
・物理的耐用年数
・法定耐用年数
・経済的耐用年数
それぞれの耐用年数について詳しく見ていきましょう。
不動産売却の耐用年数①:物理的耐用年数
物理的耐用年数とは、建物の劣化によって建物を使用できなくなるまでの年数です。材質の品質や構造物の仕組みを維持できる期間です。物理的耐用年数は、使用できなくなるまでの期間なので、使用状況によって変化しやすい不動産の耐用年数を表すことに用いることはほぼありません。
物理的耐用年数は、テレビやバッテリーなどの家電製品に用いられています。これらは耐用年数を経過すると、満足に使用できず処分するケースが多いため、物理的耐用年数が用いられています。
不動産売却の耐用年数②:法定耐用年数
法定耐用年数とは、価値を公平に算出するために国が設定している年数です。税法上価値を有する期間で、法定耐用年数を経過したからと言って使用できないわけではありません。
建物の所有者に課される固定資産税を算出する際は建物の価値を公平に算出する必要があります。そのため、法定耐用年数は建物の価値を算出する際に用いられます。
不動産売却の耐用年数③:経済的耐用年数
経済的耐用年数とは、物の価値がなくなるまでの年数です。物理的耐用年数では物が壊れる年数を表していますが、物が壊れるまでの年数は使用状況や物の性質によって異なります。
経済的耐用年数は物の価値がなくなるまでの年数であって、耐用年数を経過したからと言って使用できなくなるわけではありません。
劣化の程度や建物の機能、将来的に行われるメンテナンスを踏まえながら耐用年数を算出します。物理的耐用年数より算出しやすいものの、公平性に欠けるため、不動産の耐用年数を決める場合は法定耐用年数が用いられます。
物件の種類によって異なる耐用年数
不動産売却では、法定耐用年数が用いられることが分かりました。耐用年数は、経年劣化が生じる物に適用されるため、経年劣化が生じない土地には適用されません。耐用年数が適用されるのは、あくまでも経年劣化が生じる物件だけなので注意が必要です。
法定耐用年数は物件の種類ごとに異なるため、どの物件にどのような耐用年数が定められているか知っておくことが重要です。
主な物件の種類として、以下の4つが挙げられます。
・一戸建て
・中古一戸建て
・マンション
・木造アパート
それぞれの物件の耐用年数について詳しく見ていきましょう。
物件種別耐用年数①:一戸建て
一戸建ては一般的に木造です。新築の木造住宅の法定耐用年数は法律で22年に設定されています。
例えば、建物の価格が4,400万円の木造一戸建ての場合、毎年200万円の資産価値が減少する計算になります。22年後には資産価値が0円になる計算です。1年あたりの資産価値の下落が大きいことが木造住宅の特徴と言えるでしょう。
物件種別耐用年数②中古一戸建て
先ほどは新築の木造一戸建ての耐用年数について説明しましたが、中古の場合には計算方法が少し異なるので注意が必要です。
中古の木造一戸建ては、「(法定耐用年数-築年数)+築年数×20%」という計算式で耐用年数を算出します。
例えば、築10年の中古の木造一戸建てを取得した場合は、上記の計算式にあてはめると耐用年数は14年です。法定耐用年数22年から築年数10年を引いた12年にならないので注意が必要です。
築年数が法定耐用年数を超えている場合には、「法定耐用年数×20%」という計算式で耐用年数を算出します。法定耐用年数の22年を超えた中古の木造一戸建てを取得した場合は、耐用年数は一律4年になるということを覚えておきましょう。
物件種別耐用年数③:マンション
マンションは高層マンションで多く使用されている鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)と一般的なマンションで多く使用されている鉄筋コンクリート造(RC造)の2種類あります。
これらの構造は木造よりもしっかりしているため、耐用年数は47年と一戸建てより大幅に長く設定されているのが特徴です。
中古のマンションを取得した場合には、中古一戸建てを取得した場合と同様の計算式で耐用年数を算出します。一戸建てとマンションを比較すると、耐用年数の違いからもマンションは資産価値が下落しにくいと言えるでしょう。
物件種別耐用年数④:木造アパート
木造アパートでは、一戸建ての木造とは異なり木骨モルタル造が採用されている場合があります。木骨モルタル造の耐用年数は20年となっており、一戸建ての木造よりもさらに耐用年数が短く設定されています。
耐用年数の短い物件は資産価値の下落スピードが早く、不動産を売却する際の査定結果も低くなる可能性があるので注意しましょう。
不動産売却では耐用年数を知るのが重要
不動産売却では、不動産会社が行った査定結果が正しいか判断するために、相場を確認することも重要ですが、耐用年数の意味と計算方法を知っておくことも重要です。
建物の法定耐用年数を知るということは、建物の減価償却費を知ることにもつながります。建物の減価償却費とは、経年劣化による資産価値の減少です。不動産売却によって利益が生じたかどうか計算する際は、「売却代金-取得費(減価償却費を引く)-手数料」という計算式を用います。
この計算式でプラスになった場合には不動産所得税を課されるため、耐用年数を知ることは不動産取得税が課されるかどうか知ることにもつながります。
不動産取得税の税率は不動産の所有期間によって以下のように異なります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計(復興特別所得税を含む) | |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 20.315% |
不動産売却で大きな利益を得たとしても、上記のように税金を課される可能性があるため、不動産取得税が課されるかどうか事前に確認しておくことも重要と言えるでしょう。
まとめ
耐用年数は、物理的耐用年数、法定耐用年数、経済的耐用年数の3つですが、不動産の耐用年数を決める際は法定耐用年数を用います。
法定耐用年数は、物件の種類によって異なります。建物の法定耐用年数を知ることは、建物の減価償却費を知ることにもつながるので重要です。
減価償却費は不動産取得税がかかるかどうか分かります。不動産取得税の税率は高いため、不動産取得税が課されるかどうか知るためにも耐用年数に関する知識を身に付けておきましょう。