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公示価格と実勢価格の違いを解説|公示価格と実勢価格の調べ方付き

「公示価格」と「実勢価格」はどちらも土地の価格を示すもので、不動産売買において土地の評価額を知りたい時に参考にする価格です。

簡単に解説すると…
◎公示価格とは、公的機関が毎年公表している土地の基準となる価格のこと
       ∟公示地価と基準地価の2種類がある

◎実勢価格とは、売買する時に実際に取引される価格のことで、当事者間で決めるもの。

公示価格は、全ての土地の価格の指標ともいうべきものです。それに対して実勢価格は、決まった価格もなく、さまざまな要因によって変動するものです。

この記事では、公示価格と実勢価格の違いをメインに、以下の内容を解説していきます。

  • 公示価格とは何か?実勢価格とは何か?
  • どんな違いがあるのか?
  • 公示価格から実勢価格の目安を求める計算方法【実勢価格の目安=公示価格×1.1】
  • 正確な実勢価格を知るために必要なこと

    土地や不動産の価格について理解し、実際不動産がいくらで売買できるのか知りたい方は、ぜひこの記事を読んで理解を深めてください。

    1. 公示価格と実勢価格の違いを解説

    冒頭で解説した通り、公示価格と実勢価格はどちらも土地の価格を表しています。しかし、目的や使われ方、価格の決まり方を比較してみると、かなり違うものだと分かるはずです。

    そこでまずは「公示価格とは何か」「実勢価格とは何か」を理解したうえで、公示価格と実勢価格の違いを比較していきたいと思います。

    【補足】今回の記事では「公示価格」と「実勢価格」について解説していますが、土地の価格は「一物五価」と呼ばれ、5つの指標があります。

    • 公示地価:国土交通省が発表する土地売買の目安となる価格のこと
    • 基準地価:都道府県が発表する土地売買の目安となる価格のこと
    • 路線価(相続税路線価):国税庁が発表する相続税や贈与税の基準となる価格のこと
    • 固定資産税評価額:市区町村が固定資産税を計算するために不動産を評価した価格のこと
    • 実勢価格:実際に土地の売買が行われる価格のこと(または取引された価格のこと

    5つの指標それぞれの調べ方などを詳しく知りたい方は、「土地の評価額を出す3ステップを解説~目的に応じた調べ方を確認」の記事をご覧ください。

    1-1. 公示価格とは?公的機関が公表する適正な価格のこと

    出典:国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」

    公示価格は「公示地価(地価公示価格)」と「基準地価」のことをいい、どちらも公的機関が毎年公表している土地の基準となる「正常な価格」のことをいいます。

    正常な価格とは、早く売りたいなどの特殊な状況が無い売買で成立する適正な価格のことです。公的な機関が適正な価格を毎年公表することで、土地の売買が正常な価格で行われるようにしているのです。

     

    公示地価(地価公示価格)

    基準地価

    概要

    国土交通省が毎年発表する指標

    各都道府県が毎年発表する指標

    調査の名前

    国土交通省地価公示

    都道府県地価調査

    評価方法

    1地点につき2人以上の不動産鑑定士が鑑定後、国土交通省がその結果を審査をして決定

    1地点につき1人以上の不動産鑑定士が鑑定

    評価時点

    1月1日時点(3月に発表)

    7月1日時点(9月に発表)

    評価箇所

    全国2万3,000カ所の標準地

    全国2万カ所以上の基準地

    比較表を見ると分かる通り、公示地価と基準地価はかなり似ているものです。公表している機関に違いはありますが、実質的には同じ性格の指標と考えて問題ありません。

    公示価格とは、地価公示法に基づいて、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年公示している標準地の「正常な価格」のことです。全国で約2万3,000カ所の標準地が選ばれたうえで、土地の価格が公表されます。

    しかし、必ずしも知りたい土地の近くが標準地に選ばれないことがあります。それを補うためにあるのが基準地価です。基準地価は、国ではなく都道府県が地価調査を行い、基準地の価格(=基準地価)を公表しています。

    1-2. 実勢価格とは?実際に市場で取引される価格のこと

    実勢価格とは、土地を売買する際に、実際に取引が成立する価格(もしくは取引した価格)のことをいいます。その土地の特徴や当事者間の事情によって、実勢価格は適正価格より高くなることも低くなることもありえます。

    例えば、適正価格が3,000万円の土地があったとします。売主が売り急いでいれば実勢価格は2,000万円になることもありますし、周辺環境などが良くて買い手が殺到すれば実勢価格は3,500万円になるかもしれませんよね。

    このように、未来の実勢価格はさまざまな要因によって変動するため、実際に取引終了するまで誰も実勢価格をすることはできません。

    一方、過去に取引が行われた実勢価格は、国土交通省が公表している取引価格情報を見ることで確認できます。詳しい調べ方については、「土地の実勢価格の調べ方は?国土交通省やレインズの利用方法を解説」をご参照ください。

    1-3. 公示価格と実勢価格の違い

    公示価格と実勢価格のそれぞれの意味を理解したところで、改めて両者の違いをまとめてみました。

     

    公示価格(公示地価+基準地価)

    実勢価格

    概要

    国土交通省や各都道府県が毎年発表する指標

    その土地の取引が成立する(した)価格

    決め方

    不動産鑑定士が鑑定後、国土交通省または各都道府県が審査をして価格が決まる

    売買する当事者の間で、自由に価格が決まる

    評価時点

    公示地価:毎年1月1日(3月に発表)
    基準地価:毎年7月1日(9月に発表)

    その都度

    国土交通省や各都道府県が毎年評価を行って公表している公示価格に対し、実勢価格はその土地ごとに取引が成立する価格のことで取引ごとに都度価格が変わります

    つまり、公示価格は決まった価格であるのに対し、実勢価格は決まっていない価格という大きな違いがあります。

    2. 公示価格と実勢価格の関係を分かりやすく解説

    公示価格と実勢価格、それぞれを理解したうえで、2つの価格の関係性について解説していきます。

    2-1. 実勢価格は公示価格の1.1~1.2倍が目安

    先ほども解説した通り、実勢価格は実際に取引を進めてみないと誰にも分からないものです。

    ただし、そう結論付けてしまうと、いくらで土地を売り出したら良いか分からず困ってしまいますよね。そこで、実勢価格は公示価格の1.1~1.2倍になることが多いということを利用します。

    これを計算式にすると以下のようになります。

    土地の実勢価格の目安
    =土地の公示価格 × 面積 × 1.1(または1.2)

    例:公示地価が58,000円(1平方メートルあたり)の場所にある200㎡の敷地の場合

    実勢価格の目安は、58,000円 × 200㎡ × 1.1 = 1,276万円
    (1.2倍で計算した場合は、1,392万円)

    ただし、実勢価格が公示価格の1.1~1.2倍というのはあくまで参考値で、例外もたくさんあります。例えば以下のような理由で、実勢価格と公示価格が乖離するケースもありえるのです。

    • 分譲マンションの用地は、マンションの分譲価格から逆算した実勢価格になる
    • 都心の高度商業地は、公示価格ではなく、開発計画に基づいた収益還元法(DCF)を使って実勢価格が決まる
    • 間口が狭い土地、不整形、がけ地など使いづらい土地は、公示価格よりも実勢価格が安くなる
    • 地価公示価格は1年に1度の発表なので、急激な市場環境の変化があった場合、実勢価格と乖離する可能性がある

    実勢価格=公示価格の参考にしながらも、あくまで参考値でしかないことを肝に銘じておきましょう。

    2-2. 公示価格と実勢価格が異なる2つの理由を解説

    公示価格と実勢価格が乖離する理由をもう少し詳しく解説していきます。

    2-2-1. 公示価格と実勢価格の評価時点が異なるから

    公示価格と実勢価格がイコールとならない理由に、2つの価格の決まるタイミングが違うから、ということがあります。

    公示価格は毎年1月1日時点を評価時点として、価格が公表されます。しかし、その後に新しい駅が開業して土地の価値が上がることや、反対に大きな事件が発生して人気が下がることが考えられます。

    また、公示価格が上昇傾向にあった年に、世界中を脅かす感染症が発生して不動産業界の需要が大きく冷え込む可能性もあります。

    このような要因によって、公示価格と実勢価格は大きく乖離することがあります。土地を売買する時には、その地域の地価の動向にも目を向ける必要があります。

    2-2-2. 土地ごとの諸条件で実勢価格は大きく差が生まれるから

    土地は土地ごとに特徴があり、完全に一致する土地はありません。住所や面積が似通っていても、土地の形や正面道路の幅、間口の広さ、周辺施設への距離など、価格に影響を与える要素はたくさんあります。

    また、売主や買主の急ぎ度合いなど、当事者の事情によっても実勢価格は変動します。

    公示価格を参考にして売り出し価格を決めたとしても、実際にその金額で取引が成立するかは売買終了まで誰にも分からないものなのです。

    このように、公示価格は必ずしも実勢価格と同じにはなりませんが、土地を売買する上での参考価格にはなります。次章では、国土交通省のホームページで公示価格を確認し、実勢価格の参考値にする方法を解説します。

    3. 公示価格を確認して実勢価格の目安を計算する方法

    ここからは、国土交通省のホームページから公示価格を確認する方法を、画面キャプチャ画像をもとに丁寧に解説します。

    3-1. 国土交通省の「標準地・基準地検索システム」を開く

    まずは、国土交通省ホームページの「標準地・基準地検索システム」にアクセスします。

    出典:国土交通省「標準地・基準地検索システム」

    3-2. 公示価格を確認したいエリアを選択する

    公示価格を見るには、まず確認したいエリアを選択する必要があります。

    トップページに表示されている都道府県を選択→市区町村名をクリック→一覧から該当箇所を探す方法もありますが、これだと同じ市町村内にいくつもある地価公示の標準地が全て表示されてしまうため、具体的な地点を検索しづらいデメリットがあります。

    そこで、住所が分かっている場合は「検索地域指定(地名入力)」を選ぶと便利です。

    出典:国土交通省「標準地・基準地検索システム」(赤枠の四角は当サイトが説明のために追記したもの)

    検索地域指定(地名入力)の画面に遷移したら、調べたい住所を地名まで入力し、【決定】をクリックします。最大10箇所まで入力が可能です。

    3-3. 表示させたい条件を選択する

    地名の選択が終わると、次は「どの情報を表示させるか」を指定する【検索条件指定】画面が表示されます。

    出典:国土交通省「標準地・基準地検索システム」

    特にこだわりの条件指定がない場合は、このまま【検索】をクリックして問題ありません。

    通常状態では、国土交通省が発表している公示地価と、各都道府県が発表している地価調査(基準価格)の両方の価格を確認できます。

    最新調査年ではなく過去のデータを見たい場合や、特定の用途区分を見たい場合、特定の地価だけ見たい場合は、条件を指定します。

    3-4. 検索結果から公示価格を読み取る

    【検索】をクリックすると、指定した地域の公示地価や基準地価(地価調査の価格)が表示されます。

    Point!!

    公示価格を確認するには、【価格(円/㎡)】の欄をチェック!

    出典:国土交通省「標準地・基準地検索システム」(赤枠の四角は当サイトが説明のために追記したもの)

    この例では、以下のことが分かります。

    • 仙台市青葉区愛子中央3丁目の標準地の公示価格は5.8万円(1㎡あたり)
    • 仙台市青葉区中央1丁目の標準地の公示価格は402万円(1㎡あたり)
    • 仙台市青葉区中央2丁目の標準地の公示価格は231万円(1㎡あたり)

    なお、地価公示価格の2020年の全国平均は、23万8,070円となっています。都道府県ごとにかなり平均値には差がありますが、全国平均や都道府県ごとの平均値と比較することで、その土地の地価が高いのか低いのかを判断できるでしょう。

    参考:土地代データ

    3-5. 公示価格を参考に実勢価格の目安を計算する

    公示価格の検索結果を参考に、価格を知りたい土地に近い条件(住所、形状、道路状況、周辺環境、用途区分など)の地価を確認したら、実勢価格の目安を計算してみましょう。

    土地の実勢価格の目安
    =土地の公示価格 × 面積 × 1.1(または1.2)

    例:公示地価が58,000円(1平方メートルあたり)の場所にある200㎡の敷地の場合

    実勢価格の目安は、58,000円 × 200㎡ × 1.1 = 1,276万円
    (1.2倍で計算した場合は、1,392万円)

    例:公示地価が2,310,000円(1平方メートルあたり)の場所にある100㎡の敷地

    実勢価格の目安は、2,310,000円 × 100㎡ × 1.1 = 2億5,410万円
    (1.2倍で計算した場合は、2億7,720万円)

    ただし、できるだけ近い条件の土地の公示価格を参考にするとしても、全く同じ土地はひとつとしてありません。土地の形状や接している間口の広さ、周辺環境、駅からの導線など、土地の価格に影響する要素はたくさんあります。

    この計算式で算出した価格はあくまで参考値と捉え、より実勢価格に近い価格を知りたい場合は不動産の査定をしてもらうのがベストです。

    4. より実勢価格に近い価格を知るには不動産査定が必須

    路線価による実勢価格の目安はあくまで参考にしかなりません。土地の特徴などを加味した、実勢価格に近い土地の価格を知るためには、不動産査定を行うことをおすすめします。

    できれば、一社だけではなく複数の不動産会社に土地の査定を依頼しましょう。複数の会社に依頼することで、実勢価格に近い土地の価格を知ることができます。

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    まとめ

    最後に、この記事のまとめを簡単に振り返ります。

    まず、公示価格と実勢価格とは何かを説明したあと、公示価格と実勢価格はどう違うのかを表で比較しました。

    ◎公示価格とは、公的機関が毎年公表している土地の基準となる価格のこと
         ∟公示地価と基準地価の2種類がある

    ◎実勢価格とは、売買する時に実際に取引される価格のことで、当事者間で決めるもの。

     

    公示価格(公示地価+基準地価)

    実勢価格

    概要

    国土交通省や各都道府県が毎年発表する指標

    その土地の取引が成立する(した)価格

    決め方

    不動産鑑定士が鑑定後、国土交通省または各都道府県が審査をして価格が決まる

    売買する当事者の間で、自由に価格が決まる

    評価時点

    公示地価:毎年1月1日(3月に発表)
    基準地価:毎年7月1日(9月に発表)

    その都度

    公示価格は公的機関が公表している決められた指標ですが、実勢価格は当事者間で自由に価格が決まる価格です。

    一般的に「実勢価格は公示価格の1.1~1.2倍が目安」と言われているため、条件の近い土地の公示価格を調べれば、実勢価格の目安金額を算出できます。

    土地の実勢価格の目安
    =土地の公示価格 × 面積 × 1.1(または1.2)

    1.1~1.2倍はあくまで目安ですが、今回紹介した公示価格の調べ方と計算式を使って、売却したい土地の価格目安を一度確認してみてはいかがでしょうか。

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