「相続した土地売却を考えているけれど、どうやればいい?」
「遠方の土地を、できるだけ手間なく、良い条件で売る方法は?」
「相続した土地を売却したら、税金はどうなるの?」
土地を相続して売却したいとき、多くの方が疑問で頭がいっぱいになるのではないでしょうか。
特に、相続人であるあなたが住んでいる地域とは遠方の土地であったり、近隣であってもまったく関わっていなかったりと、状況がよくわからない土地の場合、どこから手を付けたらいいのか困ってしまうものです。
相続関連の手続きだけでも大変なのに、そこに売却の手間もかかってくると、相続する方々の負担は大きくなります。
しかも、正しい手続きや税金の知識が抜けていれば、大きなトラブルにもなりかねません。
そこで、この記事では、相続した土地を売却する際の全体像(手順の流れ)と、税金、注意点など、相続した土地売却に関するすべてが簡単にわかるように解説しました。
ご一読いただくと、相続した土地を売却をどう進めれば良いのか、わかるようになります。
さらに、税金を支払いすぎないための節税対策や、相続した土地をできるだけ良い条件で売るための注意点もお伝えします。
ぜひ、スムーズな土地売却にお役立てください。
1. 相続した土地売却の手順〜4つのステップ
まず、相続した土地売却はどのような流れで進めるのか、その全体像を把握しましょう。
手順としては、次の4つのステップで行います。
▼ 相続した土地売却の4つのステップ
ステップ① 遺産分割協議をする ステップ② 相続登記をする ステップ③ 相続した土地の売却をする ステップ④ 売却で得た現金を分割する |
各ステップごとに詳しく見ていきましょう。
1-1. ステップ① 遺産分割協議をする
ステップ①は「遺産分割協議をする」です。
遺産分割協議とは、相続人が相続財産の分割について話し合うこと。相続人が1人しかいない場合には分割しませんので不要です。
一方、相続人が2人以上いる場合には、すべての財産を目録にまとめて、その財産をどう分割するのか、相続人全員で協議を行います。
遺産分割協議でまとまった内容は、証拠として書面に残しておきます。この書面を「遺産分割協議書」といいます。
遺産分割協議書の作成は、多くの場合、専門家(行政書士、司法書士、弁護士)に依頼します。
自分で作成する場合、書式に決まりはありませんが、トラブル防止のために最低限、以下の点に注意してください。
▼ 遺産分割協議書の注意点
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遺産分割協議書は証拠として残しておくだけでなく、次のステップの相続登記でも使います。
1-2. ステップ② 相続登記をする
ステップ②は「相続登記をする」です。
相続登記とは、相続した土地の所有権を相続人へ変更する手続きです。相続した土地を、相続してすぐに売却したい場合でも、一度、相続人へ所有権を移す必要があります。
相続登記の申請は、土地の所在地の法務局に行います。相続人の居住地ではなく、土地の所在地であることに注意してください。
相続登記を行う際には、まず法務省の「不動産登記申請>手続不動産の所有者が亡くなった」のページを確認し、掲載されている様式に従って所有権移転の登記申請書を作成します。
そのうえで、必要書類とあわせて法務局へ提出します。
▼ 相続登記に必要な書類
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必要書類が多く手間がかかるため、司法書士へ依頼する方も多くいるステップです。
土地の売却を不動産会社に依頼する予定であれば、不動産会社に相談すると良いでしょう。その不動産会社と提携している司法書士へ委託することができます。
1-3. ステップ③ 相続した土地の売却をする
ステップ③は「相続した土地の売却をする」です。
このステップは、相続した土地であっても通常の土地であっても、手順は変わりません。
不動産会社に依頼して土地を売却する際の手順は、以下の通りです。
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不動産会社に「土地を売却したい」と相談すると、まず不動産会社側で物件調査と価格査定が行われます。
査定の内容に納得できたら、媒介契約(正式に依頼しますという契約)を締結します。
購入希望者が現れたら、売買代金や引き渡し時期などの売却条件を交渉し、話がまとまれば売買契約の締結です。
その後、代金の決済が行われ、土地を購入者へ引き渡したら、売却が完了します。
不動産売却の流れについて詳しくは「不動産売却では手順(流れ)を知ることが重要?売却手順について解説」をご覧ください。
1-4. ステップ④ 現金を分割する
ステップ④は「現金を分割する」です。
このステップは、相続人が1人の場合は不要ですが、2人以上の場合は必要になります。
土地を売却して得られた現金を、遺産分割協議で決めた通りの割合で分割します。
なお、土地の売却には税金がかかりますが、この税金も相続人全員が支払います。
2. 相続した土地売却にかかる5つの税金とは?
相続した土地を売却するときに、相続税以外にかかる税金には、以下の5つがあります。
税金の種類 |
説明 |
税額 |
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① 登録免許税 |
相続登記の名義変更にかかる税金 |
不動産の価額の0.4% |
|
② 印紙税 |
売買契約書に貼付する印紙代 |
売買契約書の金額に応じて2千円〜10万円 |
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③ 譲渡所得税 |
相続した土地の売却で出た利益に対してかかる税金 |
所有期間5年以下 |
譲渡所得の30% |
所有期間5年超 |
譲渡所得の15% |
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④ 住民税 |
相続した土地の売却で出た利益に対してかかる税金 |
所有期間5年以下 |
譲渡所得の9% |
所有期間5年超 |
譲渡所得の5% |
||
⑤ 復興特別所得税 |
令和19年まで上乗せされる所得税 |
所有期間5年以下 |
譲渡所得の0.63% |
所有期間5年超 |
譲渡所得の0.315% |
詳しくは「【図解でよくわかる】相続した不動産の売却にかかる税金と節税になる特例・控除を解説」の記事にて、図解や計算例付きでわかりやすく解説しています。あわせてご覧ください。
3. 相続した土地は3年10ヶ月以内に売却すると節税効果がある
相続した土地を売却する際に知っておきたいのは、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」です。
これは、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば税負担が軽くなる特例で、相続税の申告期限(10ヶ月以内)+3年=【相続して3年10ヶ月以内】に売却した場合に適用されます。
3年10ヶ月以内に売却すれば、所得費に売却した不動産に対する相続税も加算できる特例です。
譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+売却した不動産に対する相続税額+譲渡費用)−特別控除額 |
所得税・住民税の課税対象となる譲渡所得の額を減らせるので、その分、節税となります。
この特例を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
▼ 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例を利用できる要件
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詳しくは、国税庁のホームページ「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」にてご確認ください。
4. 相続した土地を売却して利益が出たら翌年2月16日〜3月15日に確定申告する
相続した土地を売却して利益が出たら、確定申告する必要があります。
具体的には、以下の計算式で譲渡所得がプラスとなった場合には、確定申告が必要です。
譲渡所得=譲渡収入金額−(①取得費+②譲渡費用) |
確定申告を行うタイミングは、土地を売却した翌年の2月16日〜3月15日です。
例えば2020年10月に土地を売却した分の確定申告は、2021年2月16日〜3月15日に確定申告を行います。
ここで重要な注意点が1つあります。先ほどご紹介した、3年10ヶ月以内の売却で受けられる相続財産を譲渡した場合の取得費の特例を利用する場合には、必ず確定申告は必要ということです。
自分で特例を適用した金額を計算し、譲渡所得がマイナスになった場合でも、確定申告はしなければなりません。特例を利用するためには、確定申告が条件となっているからです。
間違いやすい点ですので、十分にご注意ください。
5.相続した土地をトラブルなく良い条件で売却するための3つの注意点
最後に、相続した土地を売却する際の3つの注意点をご紹介します。
5-1. 売却前に相続人同士で十分に話し合いを行う
1つめの注意点は「売却前に相続人同士で十分に話し合いを行う」ことです。
相続した土地の売却に、すべての相続人が賛成とは限りません。特に、先祖代々続いてきたような歴史や縁のある土地では、反対する相続人がいることも多いものです。
後でトラブルになるのを避けるために、売却する前には相続人同士で十分に話し合いを行いましょう。
その際、売却するか・しないかの判断はもちろんですが、売却する場合には「どのような条件で売却を希望するか」についても、明確にしておくと良いでしょう。
▼ 売却する際の希望例
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スムーズな話し合いが難しい場合には、あらかじめ不動産会社などの第三者に相談して、介入してもらうのもひとつの方法です。
例えば、当社でも、相続財産の土地売却のご相談をいただいた際には、弁護士と連携を取りながら相続人となるお一人お一人にご連絡し、売却に関わるご説明や条件の調整などを行うケースがあります。
実際にご利用いただいたM様のインタビューが「相続財産の土地を売却。私の意向をくみ取り、各相続人と交渉していただけた(Mさん)」に掲載されておりますので、ぜひご覧ください。
5-2. 売却の依頼は土地の所在地の地元の不動産会社に依頼する
2つめの注意点は「売却の依頼は土地の所在地の地元の不動産会社に依頼する」ことです。
相続した土地は、自宅から離れた遠方にあることも多いでしょう。その際、自宅近くの不動産会社に依頼してしまうと、不利な売却条件でしか売却できないリスクがあります。
売却したい土地から離れた地域の不動産会社は、その土地の周辺環境や相場に関する知識が乏しく、物件調査や価格査定が正しくできない可能性があります。
土地の売却を依頼する不動産会社は、土地の所在地の地元の不動産会社を選んだ方が良いでしょう。
地元の不動産会社は、その土地周辺の事情に精通しているため、より良い条件で売却できる可能性が高くなります。
5-3. 査定は複数の不動産会社に依頼する
3つめの注意点は「査定は複数の不動産会社に依頼する」ことです。
先ほど「売却の依頼は、土地の地元の不動産会社に選んだ方が良い」というお話をしました。しかし、どの不動産会社が良いのかは、遠方であればあるほど、判断がつかないものです。
そこで、査定は必ず複数の不動産会社に依頼しましょう。
複数の査定結果をもとに、一番良い条件を提示してくれた不動産会社を選ぶことで、すべての相続人にとって不満の残らない売却が可能になります。
6. 相続した土地売却をお考えの方に不動産のプロがサポート
相続した土地をスムーズに売却するためには、専門家のアドバイスがあると心強いものです。
当社では、他の相続人の方との売却条件の調整から実際の売却まで、相続財産の土地をより良い条件で売却するためのサポートを行っています。
例えば、「複数いっかつ査定」というサービスをご利用いただければ、当社だけでなく、複数の不動産会社の査定結果を手間なく集めることが可能です。
なかなか手間暇をかけられない相続財産の売却時に、とてもご好評いただいているサービスとなっております。
こちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
7. まとめ
相続した土地売却の手順は、次の4つのステップで行います。
▼ 相続した土地売却の4つのステップ
ステップ① 遺産分割協議をする |
相続した土地を売却する際には、次の5つの税金が掛かります。
▼ 相続した土地を売却する際にかかる税金
税金の種類 |
説明 |
① 登録免許税 |
相続登記の名義変更にかかる税金 |
② 印紙税 |
売買契約書に貼付する印紙代 |
③ 譲渡所得税 |
相続不動産売却で出た利益に対してかかる税金 |
④ 住民税 |
相続不動産売却で出た利益に対してかかる税金 |
⑤ 復興特別所得税 |
令和19年まで上乗せされる税金 |
相続した土地は、3年10ヶ月以内に売却すると節税効果があります。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が適用になり、譲渡所得から売却した不動産に対する相続税額を引くことができるからです。
譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用+売却した不動産に対する相続税額)−特別控除額 |
相続した土地を売却して利益が出たら、確定申告をする必要があります。確定申告は、売却した翌年の2月〜3月のタイミングで行います。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を利用したい場合は、必ず確定申告が必要ですのでご注意ください。
相続した土地をトラブルなく良い条件で売却するためには、次の3点に注意してください。
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相続や土地売却には、さまざまな専門知識が必要になります。不動産のプロにお早めにご相談いただけると、よりスムーズに良い条件での売却が可能です。
ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。
なお、税金・特例・控除については「【図解でよくわかる】相続した不動産の売却にかかる税金と節税になる特例・控除を解説」にて、詳しく解説しています。あわせてご覧ください。