2024年10月、メガバンクを含む多くの銀行で変動金利の引き上げが発表されました。
この状況を受け、以下のような不安の声が広がっています。
「変動金利を借りているけど、固定金利に切り替えるべき?」
「今から住宅ローンで変動金利を借りるのは危険?」
そこで本記事では、変動金利の上昇が返済額に与える影響と金利の仕組みについて解説します。不安がある人はぜひ参考にしてください。
変動金利が上昇って本当?
残念ながら、変動金利が上昇したというニュースは本当です。2024年10月の改定ポイントは以下のとおり。
【24年10月の変動金利改定ポイント】
- 主要銀行の変動金利型住宅ローン改定によって金利が上昇
- 対象は主に既契約の住宅ローン。新規借入時の金利は据え置きする銀行も
- 既契約の金利が変わるのは2025年1月返済分から
これにより、現在返済している人・新規に借り入れる人の返済額は高くなる可能性があります。とはいえ、今回の改定による金利上昇幅はごくわずかで、返済額への影響は限定的です。
また、変動金利には返済額の負担を抑える仕組みがあります。たとえ金利が上昇しても、返済額の負担が数万円も増えるようなケースは極めて少ないと考えられます。
【銀行業態別】変動金利の上昇率はいくら?
変動金利は実際にいくら上がったのでしょうか。銀行業態別の金利改定対応は以下のとおりです。
【変動金利の上昇幅(引き上げ幅)】
業態 | 既契約 | 新契約 |
都市銀行(メガバンク3行+りそな銀行) | +年0.150% | +年0.150% または据え置き |
地方銀行(主に東北地方の銀行) | +年0.150% | +年0.150% |
ネット銀行 | +年0.150%~年0.250% | 銀行によって異なる |
メガバンクを含む都市銀行・地方銀行のほとんどは既契約の変動金利を年0.150%引き上げましたが、新規借入時の金利は一部の銀行で据え置き対応を取っています。
ネット銀行は各行独自の基準で金利を決定しているため、金利の上昇幅は銀行によって差がある状況です。たとえばauじぶん銀行では変動金利を年0.25%引き上げましたが、PayPay銀行では年0.15%の引き上げ対応となりました。 いずれにしても、金利上昇幅は0.15%~0.25%程度であり、ごくわずかな改定にとどまりました。
変動金利の上昇で返済額はどうなる?
それでは、実際に変動金利が0.15%上昇すると、住宅ローンの返済額はどう増えるのでしょうか? 現在返済中の人、これから住宅ローンを借りる人の返済シミュレーションを見てみましょう。
現在返済中の人
2024年10月までに住宅ローンを借りていて現在も返済中の人は、金利上昇で返済額が高くなる可能性があります。
【7年前に3,200万円で変動金利を借りている場合】
- 金利:当初年0.5%→10年後0.65%
- 返済額:当初8万3,067円→7年後8万4,786円
- 増加額:+1,719円/月
【10年前に3,000万円で変動金利を借りている場合】
- 金利:当初年0.6%→10年後0.75%
- 返済額:当初7万9,208円→10年後8万669円
- 増加額:+1,461円/月
【14年前に2,800万円で変動金利を借りている場合】
- 金利:当初0.9%→14年後1.05%
- 返済額:7万7,741円→7万8,937円
- 増加額:+1,196円/月
※シミュレーションは元利均等返済・ボーナス払いなしで試算した概算値であり、実際の返済額は銀行の金利計算方法によって異なる
借入金額や金利を変えてシミュレーションしたところ、いずれのケースでも上昇額は1,000円~2,000円弱でした。当初の借入金額がよほど高額でなければ、今回の金利改定で返済額が大きく上がるケースは少ないと考えられます。
なお、変動金利の改定状況は各銀行のサイトでチェックできます。借入中の銀行で「金利改定のお知らせ」というリリースがないかを確認してみてください。 ただし、変動金利には5年間金利変更がない「5年ルール」があります。新規借入れまたは前回の金利変更から5年経過していない場合、返済額は据え置きになるため変わりません。5年ルールについては後述しているため、あわせてご確認ください。
これから借りる人
これから住宅ローンを借りる人は、銀行の新規借入金利が以前よりも高くなっている可能性があります。金利が年0.15%上昇すると返済額はどう変わるのかを見てみましょう。
【これから新規で2,800万円を借りる場合】
- 金利:0.55%→0.70%
- 返済額:7万3,304円→7万5,185円
- 増加額:+1,881円/月
【これから新規で3,000万円を借りる場合】
- 金利:0.55%→0.70%
- 返済額:7万8,540円→8万556円
- 増加額:+2,016円/月
※シミュレーションは元利均等返済・ボーナス払いなしで試算した概算値であり、実際の返済額は銀行の金利計算方法によって異なる
金利が0.15%上昇すると、新規借入時の返済額は月2,000円程度増えます。借入金額を増やすと返済負担はさらに重くなるため、負担が気になる人は頭金を増やして借入金額を極力減らしましょう。
また、住宅にかかるトータルコストを抑える方法は金利だけではありません。諸費用が低い住宅ローンを選ぶ、火災保険料が安い保険会社を選ぶといった方法でもコストは抑えられます。金利面以外も検討し、トータルで負担を抑えるようにしましょう。
金利上昇でも安心?変動金利の仕組み
変動金利の多くは元利均等返済方式で、返済負担を抑える「5年ルール」と「125%ルール」があります。
5年ルールとは
一般的に、変動金利は半年に1回のタイミングで金利が見直しされます。 ただし、多くの変動金利には返済額は5年間変わらないルールが設けられています。
新規借入(または前回の金利変更)から5年以内の人は、たとえ金利が上昇しても返済額は据え置きで変わりません。変更されるのは元本と利息の比率です。
125%ルールとは
金利改定で前回の返済額より増額する場合、その増額分が125%を超えないよう制限されるルールです。
たとえば、現在の返済額が7万円の場合、金利の上昇額にかかわらず次の返済額は8万7,500円(125%)までに抑えられます。ここでも、変更されるのは元本と利息の比率です。
5年ルールと125%ルールのデメリットは?
5年ルールと125%ルールがあれば当面の返済負担は抑えられるでしょう。 ただし、これらのルールは金利上昇局面において、返済額に占める利息の割合が増えすぎてしまうというデメリットがあります。利息の割合が多くなれば、当然ながら元本部分の返済は進みにくくなり、返済に時間がかかることは覚えておきましょう。
とはいえ、これはあくまで金利が急上昇していった場合の話です。実際のところ、銀行が契約者の負担を極端に重くするような金利引き上げを行う可能性は考えにくく、実際に極端な金利改定が行われたことはありません。たしかに金利上昇局面がきたらデメリットはありますが、それはあくまで理論上の話です。過度に不安視する必要はないでしょう。
今後の変動金利上昇はある?
今回の金利動向は誰にもわかりません。 ただ一つ言えることは、住宅ローン金利は株価のように激しく変動するものではないということです。
今回の金利上昇の背景には変動金利の元になる指標「短期プライムレート」の改定が影響していますが、実はこの改定自体およそ17年ぶりでした。住宅ローンの金利変更は利用者の生活に大きく関わること、銀行間の競争が激化している影響で、銀行側も金利の引き上げには慎重になっているのです。 今後また金利改定があるとしても、慎重な判断のもと行われるのではないでしょうか。
そもそも、金利の上昇は景気の上昇とセットで行われるものです。住宅ローン金利が上昇局面になるときには、景気も上向きになり利用者の所得も上がっているはずです。そう考えると、金利上昇はそこまで怖いものではないといえます。
大切なのは、ライフプランや利用者の家庭に適した住宅ローンを選ぶという視点です。各家庭にあった資金計画を立てて住宅ローンを組みましょう。
まとめ
2024年10月、多くの銀行で変動金利型住宅ローンの金利改定が行われました。
これにより、主な都市銀行・地方銀行では年0.15%程度、ネット銀行では年0.15%~0.25%程度の引き上げとなっています。いずれにしても金利の上昇幅は小さく、返済額への影響は限定的です。 また、変動金利には「5年ルール」や「125%ルール」があるため、金利上昇の影響を抑える仕組みが整っています。今後も急激に金利が上昇する可能性は低く、依然として低金利の変動金利は住宅ローンを考えるうえで有効な選択肢です。
また、住宅ローン返済の負担を抑える方法には、諸費用や火災保険料などを抑えるという方法もあります。 金利だけではなく、さまざまな方法でローンの負担を抑えられるようにしましょう。 弊社ホームセレクトでは、新規借入から売却まで幅広い住宅相談を承っております。変動金利と固定金利の選び方も含め、多様な住宅ローン相談に対応しているため、お気軽にご相談ください。