「不動産を『買取』してもらいたいけど、具体的な流れが分からない」
「買取」とは、不動産会社が直接あなたの不動産を買い取る方法のことを指します。不動産会社を通して買主を探す「仲介」と比べると流れは複雑ではありません。事前準備と確定申告を含めても下記8ステップです。
事前準備から決済・引き渡しまでにかかる期間は数日から1ヶ月程度が一般的です。
ただ、買取の流れは複雑ではありませんが、事前に必要書類を用意しておくことや各ステップにおける注意点を押さえておくことで、素早く、そしてトラブルなく手続きを終えることができます。
契約においても事前にポイントを知っておけば、損を避けられるので、必ず確認しておきましょう。
本記事では、不動産買取の8つのステップを詳しく解説し、ステップごとの注意点、必要書類について網羅的に解説していきます。
それでは、さっそくひとつひとつのステップを詳しく見ていきましょう!
目次
ステップ1:必要書類の確認
不動産「買取」の1つめのステップとして、まずは、必要書類を確認しておくことをおすすめします。
「買取」を選ぶ人の中には早く不動産を売却して現金化させたいという人も多いでしょう。
そのため、契約をスムーズに行うために、事前に必要書類をチェックしておき、手元に書類がない場合には再作成や再発行をしておきましょう。
一般的に不動産(「土地」「一戸建て」「マンション」)の「買取」に必要な書類は下記の通りです。
書類名 |
土地 |
戸建 |
マンション |
登記済権利証 |
◯ |
◯ |
◯ |
固定資産税納付通知書 |
◯ |
◯ |
◯ |
建築確認済証 |
◯ |
||
土地測量図面 |
◯ |
◯ |
|
マンションの管理規約 |
◯ |
||
本人確認証 |
◯ |
◯ |
◯ |
①登記済権利証、登記識別情報 ②固定資産税納付通知書 ③建築確認済証、検査済証 ④土地測量図面、境界確認書 ⑤マンションの管理規約 ⑥本人確認証、印鑑証明書、住民票 |
その他、不動産会社によっては、不動産購入時の売買契約書や耐震診断報告書などを求められることもあります。
契約をスムーズに進めるために、「買取」を依頼する不動産会社が決定したら、必要書類についての詳細を確認しておきましょう。
ステップ2:不動産相場の確認
必要書類をチェックして準備を整えたあとは、不動産会社に買取査定の依頼をして、買取金額がいくらになるのか確認してもらいましょう。
しかし、その前のステップとして、自分で不動産相場を調べておくことを強くおすすめします。不動産相場を調べておくことで、実際に査定依頼をした際につけられた価格のチェックができるからです。
2-1.不動産相場を調べておかないと安い価格をつけられてしまうことも
「買取」では、買主を見つけて不動産売却を行う「仲介」と比べると6割から8割程度の価格に押さえられてしまうことが一般的です。不動産会社は、「買取」の後に売却して利益を得るため、リフォームをしたり販促活動をしたりといった費用がかかるからです。
しかし、そもそも安い価格がつけられやすいと言っても、売主が売却を急いでいることが多い「買取」では、足元を見られて不当に安い価格をつけられてしまうことがあります。
そのため、後から「もっと高く売れたのに…」と後悔しないよう、自分で事前に不動産価格の相場を確認しておくステップが大切なのです。
2-2.具体的な不動産相場の調べ方
「どうやって不動産の相場を調べればいいの?」については、具体的には、以下のようなものを参考にして調べてみましょう。
|
それぞれを広くチェックして相場感を養うことが大切ですが、特に重視したいのは、売出価格ではなく「成約価格」を調べられるサイトの情報です。売出価格は実際に契約した価格とは異なる可能性が高いからです。
「成約価格」を調べるためには、下記に提示した「レインズ・マーケットインフォメーション」や国土交通省の「土地総合情報システム」の中の「不動産取引価格情報検索」を使い、あなたの不動産と近い物を探して、相場を確認してみてください。
●「レインズ・マーケットインフォメーション」 不動産売買が成立すると、成約価格の報告や登録が義務付けられていますが、その成約価格に基づいて作られたデータベースです。最新の売買事例から、正確な相場をチェックできるのが特徴です。 ●「不動産取引価格情報検索」 土地や家、マンションの成約価格や物件の駅からの距離、広さ、建築年など細かい条件まで分かるので類似物件が探しやすいのが特徴です。 出典:不動産取引価格情報検索 |
「仲介」と比べると「買取」は6割から8割程度の価格に押さえられるということを念頭に、あなたの不動産「買取」の価格予測を立てておきましょう。
また、不動産相場の調べ方については、以下の記事も参考にご覧ください。
➡「不動産売却では相場を知ることが重要?令和2年の相場を解説」
➡「土地売却の相場の調べ方!いくらで売れるか自分で調べる方法と注意点」
ステップ3:査定依頼
必要書類をチェックして、不動産の相場を把握したら、いよいよ不動産会社に査定依頼をしてみましょう。
3-1.査定には「簡易査定」と「訪問査定」の2種類がある
査定には簡易査定と訪問査定の2つの種類があるので、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
①簡易査定
簡易査定は、物件の築年数や広さ、場所などから簡易的に不動産価格を出す方法です。
オンライン上ですぐに確認できることがメリットではありますが、実際の物件を見ているわけではないので、正確さに欠けることがあります。
②訪問査定
実際に不動産業者が物件を確認して、価格を出す方法です。
簡易査定より正確な価格が出ることがほとんどで、訪問査定額がそのまま買取価格となると考えてよいでしょう。ただ、簡易査定と違って、実際に不動産業者を家に招き、色々な質問に答える必要があるため手間がかかります。
3-2.査定は複数社にお願いすることがポイント
査定依頼における1番のポイントは、1社だけではなく、複数社に査定依頼をすることです。
不動産買取では、見積もり金額がそのまま買取価格になることがほとんどなので、なるべく高い金額をつけてくれる買取業者を探すために、複数の不動産会社に見積もりをお願いするようにしましょう。
効率的に査定を行うためには、まずは簡易査定を多くの不動産業者にお願いし、それぞれのサービスや対応を見てから訪問査定をお願いする不動産会社を数社絞り込むのがおすすめです。
また、ステップ2で調べた不動産相場よりも安い査定額になった場合には、「相場と比べて価格が安い理由は何ですか?」とハッキリと聞いておきましょう。
この時の不動産会社の回答や対応を見ることで、自分に最適な業者を選ぶことができます。
ちなみに、当社では「複数いっかつ査定」というサービスを展開しています。
良い条件を提示する可能性が高い複数の不動産会社への査定依頼を一括で行わせていただき、お客様は1番いい売却先や希望条件を選択することが可能です。売却したい方の条件や希望を軸にしたサービスなので、よろしければご活用ください。
ステップ4:不動産会社決定
訪問査定をお願いした不動産会社の中から、実際に「買取」してもらうところを決定します。
不動産会社によって買取価格やサービス、手続きのスピードなどが異なってくるため、不動産会社選びは慎重に行わなければなりません。
そこで、下記3つの点を押さえた上で、自分にとって最適な不動産会社を選択しましょう。
3-1.買取価格が納得できる不動産会社を選ぶ
不当に安い価格をつけるところは候補から排除し、買取価格が納得できる不動産会社を選びましょう。
ほとんどの不動産会社が自分の想定よりも安い価格をつけた場合には、理由を誠実に説明してくれるかどうかを判断基準に選ぶことをおすすめします。
ただ、高い買取価格を出してくれているというだけで不動産会社を選ばない方がいいでしょう。なぜなら高すぎる買取金額を提示している不動産業者は、何か裏がある可能性があるからです。
そのため、この後に紹介する「買取」価格以外の点、例えば、不動産業者口コミや営業担当者の対応を含めて総合的に判断するようにしましょう。
3-2.「買取」実績が多くある、評判が良い不動産会社を選ぶ
「買取」実績が多くあり、口コミなどを見て評判が良い不動産会社を選ぶようにすると、スムーズに買取が完了する可能性が高いです。
まず、不動産会社と一口にいっても得意・不得意があるため、「買取」をお願いするのであれば、「買取」の実績が多くある不動産会社を選ぶ方が安全です。
「買取」の実績に関しては、HPに実績が掲載されていることがほとんどですが、HPがないところや実績が記載されていないところは注意しましょう。
さらに、不動産会社によっては、買取をお願いした売主の口コミが掲載されているので、自分に近い物件を売却した人の口コミを見ておくとさらによいでしょう。
3-3.価格交渉など相談に真剣に乗ってくれる不動産会社を選ぶ
最後に、価格交渉などの相談に真剣に乗ってくれる不動産会社を選ぶようにしましょう。
最後までスムーズに買取手続きを終わらせるためには、営業担当者と信頼関係が築けるかという点も重要なポイントになります。
常に横柄な態度や決めつけ、こちらの話を聞いてくれないような営業担当では、「本当に妥当な価格だったのだろうか」「手続きをちゃんとやってくれるのか」と行った不安が残ってしまいます。それだけでなく、対応するたびにストレスになってしまうこともあるでしょう。
不動産業者も全ての価格交渉に答えられる訳ではないですが、「真剣に話を聞いてくれるか」「価格交渉に応じられないのであれば納得できる理由を提示してくれるかどうか」といった点をチェックしてみましょう。
不動産会社が決定したら、売却完了まであと少しです。
ステップ5:条件確認
「買取」をお願いする不動産会社が決まったら、契約の前段階である、条件確認のステップに入ります。
条件の確認とは、具体的には下記のようなものになります。
条件 |
内容 |
スケジュール確認 |
物件の引き渡し日や入金日がいつになるか明確にしておきましょう。特に入金日の認識がお互いに異なっているとトラブルの元になるので注意してくださいね。 |
必要書類の確認 |
ステップ1でも必要書類については解説していますが、不動産業者によって多少変わってくるために、入念に確認しておきましょう。漏れのないよう準備しておくことで、スピーディーに手続きが完了します。 |
家財道具の処分について |
家の家財道具は売主が処分するのか、不動産業者が処分するのかを明確にし、不動産業者が処分する場合にはいくらかかるのか確認しておきましょう。後から請求書が来てトラブルの原因となることもあるので注意です。 |
その他 |
その他、物件を引き渡す際の細かな条件、手付金金額、契約解除の場合の取り決めなどについても確認しておきましょう。 |
後からトラブルにならないよう、些細な疑問点でもしっかりと確認しておくことが大切です。
ステップ6:売買契約の締結
「買取」にかかる条件を確認した後には、買主と売主の合意のもと、売買契約を締結します。
6-1.売買契約締結の流れ
具体的には、契約書や契約約款を読み上げて最終確認をし、契約書へサインと押印をして契約締結という形になります。
この時、手付金も受け取ることになりますが、手付金は、不動産の売買金額の5%から10%くらいが目安となります。
手付金については、ステップ5の条件確認の際にしっかり共通認識を持っておくようにしてくださいね。
6-2.契約に漏れがないよう念入りな確認が大切
契約を締結した後に「やっぱりあそこの条項を見直して…」ということになると、1度契約解除しなければならないなど取り返しのつかないことになります。
また、売主側から契約解除を申し出た場合には、手付金の2倍の金額を支払う必要性が出てきてしまいます。そのため、面倒くさがらず、疑問点があれば必ず確認しておくことが大切です。
【売買契約書をチェックする際に意識すること】
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【参考:不動産の売買契約内容のチェックリスト】
契約全体 |
自分の希望条件は記載されているか |
自分にとって無理のある条件はないか |
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不明確な条件はないか |
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消費者契約に該当するか(該当する場合は消費者に不利な契約は無効) |
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売買物件の表示 |
売却物件の表示に誤りはないか |
売買代金、手付金等の額、支払日 |
売買代金、手付金等の額に誤りはないか |
買主からの支払日はいつか |
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どのような性質の手付金か(解約、証約、違約) |
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手付金等が高すぎたり安すぎたりしないか |
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土地の実測及び土地代金の精算 |
土地の実測は行うのか |
面積の増減に応じて売買代金の精算を行うのか、行う場合の単価は正しいか |
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所有権の移転と引き渡し |
所有権の移転、引渡しの時期に問題はないか(確実に引き渡しができるか) |
負担の消除 |
売却物件を完全な所有権で引渡しができるか(抵当権や賃借権などは確実に整理できるか) |
賃借権など引き継ぐ権利がある場合は、その内容は明確か |
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危険負担 |
契約締結後、引渡し前に物件が天災等により滅失、毀損した場合の取り扱いは明確か |
手付解除 |
手付解除は可能か、いつまで手付解除が可能か |
手付金が高すぎたり安すぎたりしないか |
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契約違反による解除 |
違約金や損害賠償の予定額は適当か |
契約不適合責任 |
契約不適合責任の期間は適切か |
付帯設備等の引き継ぎ |
引き継ぐべき付帯設備等は明確か |
公租公課等の精算 |
精算方法と金額を把握したか |
ローン特約 |
買主に住宅ローンの利用予定があり、特約が付されている場合は、買主の 信用力に照らして借り入れ内容(金額など)に無理はないか(無理な借り入れ内容の場合は、解除のリスクが高まる) |
その他 |
その他、特に定めておく事項はないか |
ステップ7:決済・引き渡し
契約を締結したあとは、不動産会社が残金の決済をし、あなたが物件を引き渡して「買取」の手続きが完了します。
7-1.スムーズな手続き完了のために事前にやるべきこと
この段階で「買取」の手続き自体は終了するため、ステップ1で解説した必要書類を漏れなく揃え、公共料金の支払いや引っ越しなども済ませておく必要があります。
契約締結した後から、これらのことを一気にやろうとすると少し慌ただしくなるので、事前にできることは少しずつ済ませておくことが大切です。
【『決済・引き渡し』までに済ませておくこと】
必要書類の準備 |
登記識別情報や本人確認証、印鑑証明書などを揃えておく |
引越し |
一戸建てやマンションの買取の場合には、引越しを終わらせておく |
公共料金の支払い |
公共料金(電気・ガス・水道料金等)の清算を済ませておく |
7-2.「決済・引き渡し」の当時の流れ
「決済・引き渡し」の当日の流れは下記の通りです。一般的には、銀行などの金融機関で行われることが多いです。
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ステップ8:確定申告
ステップ7の「決済・引き渡し」までで「買取」の流れは一旦終了しますが、忘れてはいけないのが確定申告です。不動産の売却に伴って利益が出た場合には、翌年の2月中旬~3月中旬の間に確定申告をしなければなりません。
8-1.確定申告が必要かどうかの判断
利益が出たかどうかは下記の計算式でチェックすることができます。
「買取価格ー(購入価格+購入時にかかった諸経費+売却時にかかった諸経費)」 |
多くの「買取」では、上記計算式に当てはめても利益は出ないことが多いかもしれませんが、一定の損失が出た場合、税金の軽減措置が受けられることもあります。
そのため、利益が出なくても「自分には関係ない」と考えずに、念のため税理士や税務署に相談することをおすすめします。
- 税理士に頼む
- 個人で行う
確定申告においては、上記2つの方法がありますが、税理士に頼むとある程度の費用がかかります。そのため、費用を抑えたい場合には税務署などで行なっている無料相談会をうまく利用して、個人でやることを検討してみましょう。
確定申告を忘れた場合には、無申告加算税や延滞税など本来払うべき税金に上乗せされて支払わなければならなくなるので注意が必要です。
8-2.控除の制度があることに注意
不動産の「買取」によって利益が出た場合でも、特別控除・特例が利用でき、税額を抑えられることがあるので注意しましょう。
例えば、不動産を売却した際に出た利益から3,000万円が控除される「3,000万円特別控除」などがあります。ただし、特別控除・特例を利用するためには、確定申告が必要です。
不動産売却にかかる確定申告について詳しく知りたい場合には、下記の記事も参考にしてみてくださいね。
➡「土地売却の税金の計算方法をどこよりも分かりやすく解説!初めてでも簡単にできる」
➡「相続した実家を売却すると税金はいくら?計算事例と節税方法を解説」
9.まとめ
不動産「買取」の8つのステップについて詳しく解説しました。
「買取」とは、不動産会社が直接あなたの不動産を買い取る方法のことを指します。不動産会社を通して買主を探す「仲介」と比べると流れは多くなく、下記ステップの通りスピーディーに手続きは完了します。
事前準備から決済・引き渡しまでにかかる期間は数日から1ヶ月程度が一般的です。
事前に必要書類を用意しておくことや各ステップにおける注意点を押さえておくことで、素早く、そしてトラブルなく手続きを終えることができるので、しっかり記事を確認しておいてくださいね。
本記事を読むことで、不動産買取の流れについて理解し、スムーズに不動産買取を行う準備ができたなら幸いです。