土地売却時にかかる税金には所得税・住民税・印紙税の3つがありますが、特に譲渡所得(売却益)にかかる所得税や住民税は高額になりがちです。しかし、せっかく大切な土地を手放すわけですから、できれば税金を安く抑えたいですよね。
そこで今回の記事では、土地売却の3つの税金から計算方法、節税方法、確定申告の仕方まで網羅的に解説していきます。
▼この記事を読むと分かること ●土地売却にかかる税金には、所得税・住民税・印紙税の3つがある ●土地売却の所得税の計算方法は3ステップで簡単 ●特別控除や特例を使えば、土地売却の税金を節税できる ●土地売却の税金は、いつ・どこで・誰が・どのように納めるか |
初心者でも分かりやすい簡単な言葉だけを使って説明します。これを読めば土地売却の税金についての全体像を理解できます。
最後には、土地売却の税金について良くあるQ&Aも用意しました。ぜひ最後まで読んで、疑問点を全て解消してみてください。
目次
1. 土地売却で課される税金には3種類がある
土地を売却した時にかかる税金には、以下の3つの種類があります。
税金の種 |
概要 |
所得税(+復興特別所得税) |
土地売却で得た利益に対して課税されるもので、翌年の2月16日~3月15日に確定申告することで税額を申告し、納税する。2037年までは復興特別所得税が加算される。 |
住民税 |
土地売却で得た所得に対して課されるもので、譲渡所得税を確定申告した翌年に徴収される。 |
印紙税 |
土地売却する時の売買契約書にに課税されるもの。 |
なお、土地は消費されるものに該当しないため、土地を売却しても「消費税」はかかりません。また、不動産の所有権の移転登記を行うための「登録免許税」は一般的に買主が払うものなので、土地を売却した売主は払う必要がありません。
所得税・住民税・印紙税という3種類の税金について、もう少し詳しく見ていきましょう。
1-1. 土地売却した譲渡所得にかかる「所得税」
土地売却にかかる税金の中でもっとも負担が大きいのが「所得税」です。土地を売却して利益(譲渡所得)を得た場合、その所得金額に応じた所得税を納める必要があり、確定申告をして納税します。
支払う所得税額は、土地の売却金額から取得費や経費などを引いた利益(譲渡所得)がいくらかによって決まります。所有期間が短ければ利益に対して30%もの所得税が発生するため、税額負担は大きくなりがちです。
【例】譲渡所得(利益)が400万円で、短期譲渡所得(所有期間が5年以下)の場合、税率は30.63%(復興特別所得税含む)なので、 ➡所得税額(復興特別所得税含む)=400万円×30.63%=約122.5万円 |
ただし、マイホームを売却した場合の3000万円特別控除などを使えば、所得税を大幅に削減できるケースもあります。詳しい所得税の計算方法や特例については「2. 土地売却にかかる所得税の計算方法ステップ」「3. 土地売却の税金を節税できる特別控除や特例」で説明しています。
1-2. 土地売却した翌年に徴収される「住民税」
住民税とは前年の所得に対して課税されるもので、1月1日時点で住民票がある市区町村から徴収されます。
住民税額は市区町村が計算するため自分で計算する必要はありませんが、念のためどのくらいの金額になるかを知っておきましょう。税率は、所有期間が5年を超えるかどうかによって変わります。
譲渡した年の1月1日時点での所有期間 |
住民税の税率 |
所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得) |
課税譲渡所得 × 9% |
所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得) |
課税譲渡所得 × 5% |
例えば、譲渡所得(土地売却で得た利益)が1,000万円だった場合で所有期間が5年以下の場合は、住民税は1,000万円×9%=90万円となります。
課税譲渡所得の額を求める方法は、このあとの2章で詳しく説明しているので参考にしてください。
会社員などの給与所得者の場合は、確定申告した年の5月頃に会社に住民税決定通知書が届き、6月から12カ月間給料から天引きされます。自営業者などの場合は5~6月頃に家に住民税決定通知書と納付書が届きますので、自分で支払い方法を選んで納付しましょう。年4回または一括での納付が可能です。
住民税は忘れた頃にやってくるので注意! 土地を売却してから住民税を払うまでは少しタイムラグがあります。例えば2020年1月に土地を売却した場合、翌年2021年の2月16日から3月15日までに確定申告を行い所得税を払います。住民税の支払いはさらにその後の2021年6月からとなります。売却益が大きければ大きいほど住民税額も高くなるため、前もって心づもりをしておきましょう。 |
1-3. 契約書締結時に払う「印紙税」
印紙税とは、契約書や証書などを作成する時に課税される税金で、土地を売却した場合は「売買契約書」に対して所定の印紙税額を納める必要があります。
税額は以下のように決められています。なお、平成26年4月1日から令和4年3月31日の間に作成される契約書については軽減措置の対象となり、税額が安くなっています。
契約金額 |
印紙税額 |
軽減措置 |
100万円超500万円以下 |
2,000円 |
1,000円 |
500万円超1,000万円以下 |
1万円 |
5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 |
2万円 |
1万円 |
5,000万円超1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
1億円超5億円以下 |
10万円 |
6万円 |
例えば、土地を2,000万円で売却する場合は、印紙税額は1万円となります。
印紙税は、税額に相当する収入印紙を購入して契約書に貼ることで納税が完了します。つまり、2,000万円の土地の売買契約書を締結する時には、1万円の収入印紙を購入して契約書に貼り付けます。
収入印紙は、郵便局や法務局、コンビニエンスストア、酒店などで購入できます。また、不動産会社が収入印紙を用意してくれるケースもあります。
2. 土地売却にかかる所得税の計算方法ステップ
土地売却にかかる3つの税金のうち、少し手間がかかるのが「所得税」の計算です。住民税は、確定申告した内容をもとに市町村が計算してくれるため、自分で計算する必要はありません。また、印紙税は土地の売却額に応じて決められた税額を収入印紙で納めるだけです。
そこでここからは、土地売却にかかる譲渡所得税の計算方法を3ステップでお伝えします。
2-1. 譲渡所得(売却益)を計算する
土地売却の譲渡所得税は、土地を売却して利益が出た分に対して課税されます。この利益の部分を「譲渡所得」といいます。
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 |
言葉の意味が分からないと難しく思えるかもしれませんが、ようするに譲渡所得(土地が売れた金額)から、取得費(購入当時の値段、購入のためにかかった経費)と、譲渡費用(売却するのにかかった経費)を引いて、特別控除がある場合は特別控除額を引けば良いだけです。
以下に、各用語の解説をまとめました。
内容 |
例 |
|
譲渡価額 |
土地を売却した価格 |
7,000万円 |
取得費 |
土地を取得(購入)するためにかかった費用のこと 土地の購入値段はもちろん、建築代金、購入手数料(登録免許税・不動産取得税・特別土地保有税・印紙剤)のほか、設備費や改良費、立退料、造成費用、測量費なども含まれます。 建物を売却した場合は建物の経年劣化分を差し引きますが、土地には経年劣化が無いため、減価償却費相当額を計算する必要はありません。 |
5,000万円 |
譲渡費用 |
土地を譲渡(売却)するのに直接かかった費用のこと 支払った仲介手数料、印紙税、土地を売るために建物を取り壊した場合はその費用や建物の損失額、土地を売るために契約解除などで発生した違約金、借地権を売るためにかかった名義書換料などが含まれます。 |
500万円 |
特別控除 |
適用できる特例(特別控除)があるかどうかを確認し、適用できる場合は特別控除額を差し引く 使える特例がある場合は税金を安くできるため必ず確認しておきましょう。 ・居住用財産の3000万円特別控除 |
3000万円控除 |
譲渡価額(売却金額)7,000万円、取得費5,000万円、譲渡費用500万円、適用できる特例は無い場合の例を用いて計算式を埋めてみましょう。
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 |
譲渡所得=7,000万円-(5,000万円+500万円)-0=1,500万円 この場合は、譲渡所得金額は1,500万円となります。 |
2-2. 適用できる特例(特別控除)を確認する
特例を使えば、譲渡所得から特別控除を引き去ることができます。譲渡所得が安くなれば、納めるべき税金も安くなります。
例えば3000万円特別控除を使える場合、ケースによっては以下のように譲渡所得をゼロにでき、所得税や住民税を納める必要がなくなります(特例を利用するために確定申告は必要です)。
土地を売却した場合に使える特例としては、以下の3つの特例がメインとなります。マイホームとして利用していた土地を売却する場合など、念のため自分の場合に適用できる特例がないか確認してみましょう。
税金を安くできる特別控除や先送りにできる特例などについては、「土地売却で使える11種類の税金控除と特例を解説【一覧表付き】」の記事でさらに詳しく解説しています。
計算例として、譲渡価額(売却金額)7,000万円、取得費350万円、譲渡費用500万円で、3000万円特別控除が適用できる場合について説明します。
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 |
譲渡所得=7,000万円-(350万円+500万円)-3,000万円=3,150万円 この場合の譲渡所得金額は3,150万円となります。 特別控除がなければ6,150万円について課税されるため、かなりの節税効果があります。 |
2-3. 所有期間に応じた税率を乗算する
ここまでで課税される譲渡所得金額を出せたら、あとは所定の税率をかければ税金を算出できます。税率は、譲渡した土地の所有期間が5年以下か5年を超えているかによって変わります。
譲渡した年の1月1日時点での所有期間 |
所得税 |
復興特別所得税 |
住民税 |
合計 |
所有期間が5年以下(短期譲渡所得) |
30% |
0.63% |
9% |
39.63% |
所有期間が5年を超える(長期譲渡所得) |
15% |
0.315% |
5% |
20.315% |
所有期間は、譲渡した年の1月1日時点で計算されるため注意が必要です。例えば2015年5月1日から2020年5月2日まで所有していた土地があったとすると、暦の上では5年を超えていますが、譲渡所得税を計算する上では2020年1月1日時点で5年以内となるため、短期譲渡所得の税率が適用されます。
<短期譲渡所得の場合の計算例>
譲渡所得=3,150万円の場合で、譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年以内の場合 所得税+復興特別所得税=3,150万円×30.63%=約964.8万円 |
<長期譲渡所得の場合の計算例>
譲渡所得=3,150万円の場合で、譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合 所得税+復興特別所得税=3,150万円×15.315%=約482.4万円 |
なお、マイホームを売却した場合で所有期間が10年を超える場合は「10年超所有軽減税率の特例」を使える場合があり、さらに税率が安くなります。この特例については「3-3. 10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」で解説しています。
3. 土地売却の税金を節税できる特別控除や特例
土地売却では大きな金額が動くため、その利益にかかる税金も大きな金額になりがちです。そこで利用したいのが、税金を軽減できる特例控除や税率を軽減できる特例です。
ここでは、土地を売却した場合に多く利用される3つの特例を紹介します。
特に3000万円特別控除では、税金の負担を大きく軽減できる可能性があります。自分のケースでも使える特例がないか、ぜひ確認してみてください。
なお、ここでは特例の概要だけ抜粋してご紹介しますので、全ての適用要件などを知りたい方は「土地売却で使える11種類の税金控除と特例を解説【一覧表付き】」の記事をぜひ参考にしてください。
3-1. 居住用財産の3000万円特別控除
マイホームを売却したときに使える特例で、取り壊して更地にした場合も要件が合えば対象となります。所有期間の長短にかかわらず譲渡所得から3,000万円控除できるため、税金を大きく減らせます。
売却益(売却金額から取得費や経費を除いたもの)が3,000万円以内であれば譲渡所得をゼロにでき、税金もゼロとなるため、適用要件に合致していないかどうか確認してみましょう。
<特例を受けるための主な適用要件>
|
3-2. 相続空き家の3000万円特別控除
親などが住んでいた実家を相続した場合、その家屋が1981年5月31日以前に建築されているなどの要件を満たすと、「相続空き家の3000万円特別控除」を受けることができます。家屋を取り壊して更地にして売却した場合も対象です。
前述した「居住用財産の3000万円特別控除」の特例と同様に、譲渡所得をかなり削減できる特例なので、適用要件に合致していないか忘れずに確認してみましょう。
<特例を受けるための主な適用要件>
|
3-3. 10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
自分が住んでいたマイホームを売った場合、家屋が取り壊された年の1月1日時点で所有期間が10年を超えているなど一定の要件を満たすときは、この特例を使うことで長期譲渡所得(所有期間5年超)の税額より低い税率を適用できます。
<所有期間ごとの譲渡所得の税率表>
譲渡した年の1月1日時点での所有期間 |
所得税 |
復興特別所得税 |
住民税 |
合計 |
所有期間が5年以下(短期譲渡所得) |
30% |
0.63% |
9% |
39.63% |
所有期間が5年を超える(長期譲渡所得) |
15% |
0.315% |
5% |
20.315% |
10年超所有軽減税率の特例を適用できる場合 |
||||
所得税 |
復興特別所得税 |
住民税 |
合計 |
|
6千万円以下の部分 |
10% |
0.21% |
4% |
14.21% |
6千万円超の部分 |
15% |
0.315% |
5% |
20.315% |
譲渡所得の6千万円以下の部分の税率がかなり安くなるため、マイホームを売却する場合は適用要件に合致しているか確認してみましょう。
<特例を受けるための主な適用要件>
|
3-4. 土地売却時に使えるその他の特例・特別控除
ここまで紹介した3つ以外に、以下のような特例や特別控除があります。自分のケースで使えそうな特例があるか確認してみてください。
4. 土地売却にかかる税金のシミュレーション例
ここまで読んで、土地売却にかかる税金の計算方法や特例についておおよそイメージができたのではないでしょうか。ここからは、いくつかの計算シミュレーション例を紹介しますので、自分で計算する場合の参考にしてみてください。
4-1. 特例を使わない一般的な計算シミュレーション
まずは3000万円特別控除などの特例を使わない場合のシミュレーションをしていきます。
①所有期間が5年以内の場合
所有期間が5年以内の場合は、所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%、合計で39.63%です。
【シミュレーション例】 譲渡所得税+住民税(復興特別所得税含む) |
②所有期間が5年を超えている場合
所有期間が5年以内の場合は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%、合計で20.315%です。
【シミュレーション例】 譲渡所得税+住民税(復興特別所得税含む) |
4-2. 3000万円の特例が使える場合の計算シミュレーション
「居住用財産の3000万円特別控除の特例」や「相続空き家の3000万円特別控除の特例」が使える場合は、譲渡所得(譲渡価額-取得費-譲渡費用)から最大3,000万円を差し引くことができます。
【シミュレーション例】 譲渡所得【3,000万円-(2,500万円+300万円)-3,000万円】がマイナスになる |
3000万円を差し引いても譲渡所得がプラスの場合のシミュレーションもご用意しました。所有期間が5年超(税率20.315%)の例です。
【シミュレーション例】 譲渡所得税+住民税(復興特別所得税含む) (ちなみに特別控除を適用しなければ、税金合計=約914.1万円になります) |
4-3. 購入した金額が分からない場合
売却した土地の取得費(購入した金額)が分からない場合は、売却金額の5%相当額を取得費とすることができます。
【シミュレーション例】 譲渡所得税+住民税(復興特別所得税含む) |
さらに詳しいシミュレーション例を見たい方は、「土地売却の税金のシュミレーション方法|事例6つとサイト2つを紹介」の記事もご覧ください。
5. 土地売却の税金を確定申告する方法
土地を売却して利益が出た場合は、その利益に応じた所得税を納める必要があるため、確定申告が必須となります。納税の義務を怠ってしまうと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるため忘れずに確定申告するようにしましょう。
5-1. 確定申告は土地を売却した翌年の申請期間中に行う
確定申告は、土地を売却した翌年の2月16日~3月15日の間に行います。いつ・どこで・誰が・どのように行うのかを簡単に表にまとめました。
確定申告は、いつ・どこで・誰が・どのように行う? |
|
確定申告を行う期間 |
土地を売却した翌年の2月16日~3月15日の間 |
確定申告を行う場所 |
確定申告する年の1月1日に住民票がある自治体内の税務署 |
確定申告を行う人 |
納税者本人 |
確定申告を行う方法 |
①譲渡所得の内訳書を記入しておく |
「譲渡所得の内訳書」や確定申告書の書き方など、より詳しい内容については、「土地売却時の確定申告は必要?必要性の判断方法と申告ステップを解説」の記事で解説しています。
5-2. 確定申告時に用意すべき必要書類は多岐にわたる
確定申告時に用意すべき必要書類はかなり多く、事前に少しずつ準備しておくと良いでしょう。以下は、どのケースでも共通して必要となる書類です。
必要書類 |
入手場所 |
①譲渡所得の内訳書 |
税務署 |
②確定申告書B様式(譲渡所得がある場合) |
税務署 |
③確定申告書第三表(分離課税用の申告書) |
税務署 |
④【譲渡時の書類】売買契約書のコピー |
自分で用意 |
⑤【譲渡時の書類】譲渡費用(仲介手数料など)の領収書コピー |
自分で用意 |
⑥【取得時の書類】売買契約書のコピー |
自分で用意 |
⑦【取得時の書類】取得費用の領収書コピー |
自分で用意 |
⑧譲渡した土地の全部事項証明書 |
法務局 |
⑨その他、源泉徴収票やマイナンバーなど確定申告に必要なもの |
自分で用意 |
3000万円特別控除など特例を利用する場合は、これにプラスして更なる必要書類が増えます。特例を利用する場合に用意する必要書類が知りたい方は、「土地売却の確定申告で用意すべき必要書類一覧を分かりやすく解説【チェックリスト付】」で7つのケースごとに紹介しているので、そちらもぜひご覧ください。
6. 土地売却の税金に関するQ&A
ここからは、土地売却の税金について良くある疑問をまとめて解決していきましょう。
6-1. 土地を売却して税金がかからない場合もあるの?
A:利益が出ていない場合、または特別控除を使って課税譲渡所得金額がゼロになる場合は、所得税・住民税はかかりません。
所得税は、譲渡所得(不動産などを譲渡することによって生じた所得のこと)に対して課税されるものです。そのため、土地を売却して所得が発生しない(=利益を得ていない)場合は税金は一切かかりません。例えば、3,000万円で購入した土地を3,500万円で売却し、売却手数料に600万円かかった場合は、手元に利益が残っていないため税金を支払う必要がありません。
また、土地売却で利益が出た場合も、3000万円特別控除の特例などを使って「課税譲渡所得金額(譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」がゼロ以下になった場合は、税金を支払う必要はありません。
6-2. 売却した土地の取得費が分からない場合は?
A:取得費が分からない場合は、土地の譲渡価額の5%相当額を取得費にできます。
取得費とは、土地を売却してどのくらい利益が出たか(=譲渡所得)を計算する時に必要なものです。
購入時の売買契約書などがある場合はその購入価格を取得費とできます。(建物の場合は経年劣化による減価償却分を計算して取得費にする必要がありますが、土地は経年劣化しないため、当時の購入価格をそのまま取得費にできます。)
しかし購入時の資料などを紛失してしまったなど取得費が分からない場合は、売却金額の5%を取得費とすることができます。例えば、5,000万円で土地を売却した場合は、売却金額の5%にあたる250万円を取得費にできます。
ただし一点注意点があります。「売却金額の5%」を取得費とする方法は簡単ですが、取得費が本来の価格より低くなる傾向があり、譲渡所得が高くなってしまい、結果的に支払う税金が高くなりがちなのです。例えば、3,000万円で購入した土地を5,000万円で売却した場合で、取得費を示す資料がない場合は250万円しか差し引けないため、税金を計算するうえで不利になってしまいます。
取得費が分かる場合、譲渡所得金額は1,600万円で税金合計は約325万円 譲渡価額5,000万円-(取得費3,000万円+譲渡費用400万円)=譲渡所得金額1,600万円 |
▼取得費が分からないと、納税額が558万円も高くなってしまう▼
▼取得費が分からない場合、譲渡所得金額は4,350万円で税金合計は約883.7万円 譲渡価額5,000万円-(取得費5,000万円×5%+譲渡費用400万円)=譲渡所得金額4,350万円 |
できれば購入時の資料などを探し出し、できるだけ本来の購入金額を証明できるものを見つけると良いでしょう。
6-3. 簡単にシミュレーションできるサイトはある?
出典:smlt.jp
取得費・譲渡費用・特例の有無が分かれば、土地売却の税金を計算するのはそれほど難しくありません。ただし、もっと簡単にパッとシミュレーションしたい方は、オンラインで瞬時にシミュレーション結果を出せるサイトを使う手もあります。
シミュレーションサイト |
概要 |
不動産に関する税金などを瞬時に計算できるリアルタイムシミュレーター |
|
不動産を売却した時の手取り金額を試算できるシミュレーター |
どちらも瞬時に金額を計算できる便利なツールなので、必要性に応じてぜひ使ってみると良いでしょう。
まとめ
この記事では、土地売却にかかる税金について、さまざまな情報を網羅的に解説してきました。
土地売却時に納める税金は、所有期間が5年以下の場合は39.63%も納める必要があり、かなり高額になることもあります。そこで、できるだけ損をしないために、節税できる特例や特別控除などの適用要件を知っていくことが大切です。
3000万円特別控除が使える場合と使えない場合だと、納める税金の額に百万円単位で差が生まれることもあります。事前に節税する方法や選択肢を知っていくことで、余計な税金を支払ってしまわないよう、知識を身につけておきましょう。